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第5章 辺境の地へ
5 リリーとの出会い
しおりを挟む翌朝、廊下から使用人たちの動きだす音が聞こえると、ルイーズはベッドから起き上がり、身支度を始めた。昨夜は何とか眠りにはつけたものの、リオンたち三人の様子が気がかりで、夜が明ける頃には目を覚ましていたようだ。
朝の支度も終えて、寝室の隣の部屋で荷物の整理をしていると、リアムが室内のドアから顔を出した。
「リアムおはよう。今日は早いわね」
「よその屋敷で寝たのは初めてだから……」
「そうね。まだ早いけど、朝食は食べられるかしら?」
「はい」
「それなら身支度を整えて、呼ばれるのを待ちましょう」
ルイーズが、侍女から受け取っていた洗面器とタオルを差し出すと、リアムは身支度を始めたようだ。ちょうど身支度を終えた頃、侍女が部屋をノックした。
「失礼いたします。朝食の準備をさせていただいてもよろしいでしょうか」
「二人もすぐにきますから、四人分の準備をお願いします。」
今朝は、エマとエリーを含めた四人で一緒に朝食を摂る約束をしていたようだ。侍女が準備を始めてしばらくの時間が経った頃、部屋にエマとエリーが訪ねてきた。四人は挨拶を交わすと、着席をして食事を始めた。
「ルーちゃん、昨日はありがとう。スープを飲んでお腹を満たしたから、良く眠れたわ」
「それは良かったです」
「昨夜は、リリーちゃんの部屋に行ってくれたのよね。二人とも食事は摂ったのかしら」
「私が訪ねたとき、リオンさんは疲れた表情で、何も口にされていない様子でした。でも、軽食は受け取ってくれたので、多分食べてくれたかと思います。それから、私は食事が終わったら、また部屋に伺うとリオンさんに伝えました」
「僕もいきます」「私も行くわ」
リアムとエリーが言い放つと、エマが横から待ったをかけた。
「大人数で行くのは迷惑だわ。ルーちゃんは約束してるけど、二人が行くのはどうかしら」
「僕に行かせてもらえませんか。父からも、何かあったら姉上に付いて行くようにと言われました」
「そう……わかったわ。二人とも、よろしくね」
リアムの言葉を聞いたエマは、少し考えた後で、二人に任せることにしたようだ。
♦
ルイーズとリアムは、食事が終わるとすぐに、リリーの部屋に向かった。部屋に着いてドアをノックすると、中からはレアが出てきた。
「ルーちゃん、リアム。おはよう、どうしたんだ?」
「レアさん、おはようございます。昨日お屋敷に着いてから、休まずに妹さんの看病をされていますよね。今日は私が変わります」
「でも、まだどんな状態か、把握していないんだ……だから」
「お二人に何かあったら、妹さんも心配されます。どうか、少しだけでもお休みになってください」
「……ありがとう、ルーちゃん。それなら、少しだけ休ませてもらうよ」
レアはリオンにも声を掛けにいったようだが、ソファーにもたれて眠っているようだ。
「ルーちゃんすまない。兄上は起きそうにないから、ここで休ませておいてくれ」
「分かりました。何かあったら声を掛けますね」
「よろしく頼む」
ルイーズとリアムの二人は、レアが部屋から出ていくと、リリーの眠るベッドの横にある椅子に腰かけた。二人は眠っているリリーを見つめている。
「顔色が良くないですね」
リアムに目を合わせ頷くと、ルイーズはケットの上に出ているリリーの手の上に、自分の手を合わせた。どのくらいの時間が経っただろうか。リリーの瞼がゆっくりと上がった。まだ眠気があるのか、具合が悪いのだろうか。リリーは、虚ろな様子でルイーズの方に顔を向けた。
「だれ?」
「ルイーズと申します。部屋にはお兄様もおりますから、心配なさらないでくださいね」
囁くように話しかけるルイーズに、リリーがゆっくりと瞬きをする様子は、頷いているようにも見える。
「リアム、リオンさんに妹さんが目を覚ましたと伝えてきて」
リアムはルイーズに頷くと、リオンのいるソファーに向かった。
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