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第4章 修道院
5 修道院へ行く ③
しおりを挟むその頃の修道院長室では、四人がルイーズとエリーについて話していた。
エマとエリーの関係性や、ルイーズの家名であるブラン家について、エリザベスが修道院長のイリスに情報を共有しているようだ。
その間、自分の手をじっと見つめるレアに、エマがどうしたのかと尋ねた。
「今しがた、ルーちゃんに握られた手なんだが、痛みが和らいだような気がするんだ。傷が消えたわけではないんだが……」
「気のせいではないの?人の体温やぬくもりで、心が落ち着くとかよく言うじゃない」
「そうだろうか……心が安らいだような感覚にはなったが……」
言葉を交わすレアとエマの会話を聞いたイリスとエリザベスは、お互いに目を見合わせた。
「先日お手紙でご連絡した内容ですが、私の予想した内容が正しければ、ブラン家には悪いものを取り除く力や癒す力があるということでしょうか?今までそのような事例を見聞きしたことがないので、あくまでも私の想像ですが……」
エリザベスの発言を聞いて、しばらく考えていたイリスが口を開こうとしたその時、エリーとルイーズが部屋に入ってきた。
「遅くなりました……申し訳ございません。聞くつもりはなかったのですが、『ブラン家』と私の家名が聞こえたので、気になってしまい……ブラン家についてのお話でしたら、私も教えてほしいです」
話しの内容を聞いたらしいルイーズ。その気持ちを聞いたイリスが、エリザベスに頷きながらルイーズに話しかけた。
「そうね、自分のことだもの。知りたいと思うのは当然だわ。どうかしら、こちらで分かっていることは話してあげた方が良いと思うのだけど」
ルイーズに答えた後、エリザベスに問いかけるイリス。
「そうですね。あくまでも推測の域ですが、説明不足の時はご協力いただけますか」
「わかったわ。私のわかる範囲だけど、お話をさせてもらうわ。さあ二人とも、こちらに座ってちょうだい」
二人がソファーに座るのを確認すると、エリザベスが語りだした。
「ブラン家の話をする前に、何故このような話をしていたか説明するわ。
きっかけは、エマから幼い頃のエリーとルーちゃんの話を聞いたことなの。その頃の思い出話をしていた時に、ルーちゃんの目の色が少し変化したような気がするという話になったわ。違和感を覚えた私たちは、すぐさま調べたけど、答えは見つからなかった。
そこで、この話を修道院長様に尋ねたの。その時、私たちも知らなかったルーちゃんのお祖父様や第三王女の情報を聞いたわ。50年前に問題を起こした当時の第三王女は、ルーちゃんのお祖父様に懸想していたそうなの。その話を聞いたときに、少しずつ、話しの繋がりが見えてきたわ。
ここからは、私たちの予想だけど……、当時から、お祖父様とルーちゃんのお祖母様はとても仲睦まじく、第三王女からの一方的な恋心にも、お祖父様は振り向くことはなかった。そこで、傷ついた第三王女は50年前の問題を起こして、幽閉された。
その後、ご結婚されて子供が生まれて孫ができたお祖父様は、仕事で忙しいブラン子爵の代わりに、後継者として育てていたルーちゃんを連れてよく領地を回っていた。その二人を見かけた第三王女、もしくはその関係者か信奉者がお祖父様にそっくりなルーちゃんに危害を加えるようなことがあった。その時に、目の色が変化するような『何か』があった……ここまでが、ルーちゃんの目の色が変化した理由の予想よ。まだ話は続くけど、ここまでで何か質問はあるかしら?」
話しを聞いていたルイーズは、愕然とした。疑問に思うところもあるが、それ以上に50年前の問題に、間接的だが自分が関わっているなど思いもしなかった。
ルイーズは、動揺してまだ落ち着かない気持ちを抑えて話始めた。
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