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第3章 侍女科

5 生徒会 ②

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「本当に二人とも、妹には甘いわよね。少し過保護過ぎやしないかしら」

 エリザベスの発言に、すぐさま反応するエマ。

「そういうリザもね。結局エリーの侍女話を受け容れているし」

 エマから責められていると感じたのか、言葉に詰まるエリザベス。

「……。まあそうね。私は兄弟がいないから分からないけれど、もし妹がいたらあんな感じなのかしら。小さい頃のエリーの様子を見ていたから、つい甘やかしてしまうのよね」

 今度はエリザベスの言葉を聞いたエマが、俯きながらため息をついた。

「私も姉も、もう少しあの子の気持ちを考えるべきだったと反省はしているわ。幼い頃から婚約者のいる姉は、婚約者や母と一緒の外出が多かったし、私は父の外交についていくことが多かった。今思えば、私がエリーと一緒に自宅に残れば良かったのだけど……。外国に行きたい私と、大きな声では言えないけれど……、ゆくゆくは爵位を私に譲りたいという父の思いが重なって……。全く配慮ができていなかったのよ」

「まあ、幼かったあなたにそこまで求めるのも、酷な話しよね」

 エリザベス自身も、後悔しているのかもしれない。迫力美人の外見からは分かりづらいが、人情身に溢れる人物のようだ。

「うちの妹も、エリーと同じだ。私と兄は王都に出てきているし、仕事漬けの父親に期待することはできない」

 レアの言葉に頷くエマとエリザベス。

「そうよね、リリーちゃんも一人なのよね……。長期休みに帰省するのなら、私も辺境伯家に行こうかしら」

 エリザベスの提案を、エマはすぐさま却下した。

「リザは、予定が詰まっているから無理よ。レアは……、早く帰省できるように予定を組み直すわ。でも、長期休みになってしまったらごめんなさい」

 肩を落とすエリザベスと、エマに感謝するレア。

「いや、無理を言ってすまない。よろしく頼む」

「良いのよ。でも、レアは頻繁に帰れる訳ではないし、リリーちゃんにも近しい存在がいると良いのだけど。近くに心を許せるような人はいないのかしら。エリーには、祖母やルーちゃんがいたから、少しは違ったのよね」

「ルーちゃん……、とは?」

 初めて聞く名前(愛称)なのだろう。レアはエマに聞き返した。

「エリーと同時期に転科した子爵令嬢よ。穏やかで優しくて、とても可愛い子なのよ。今思うと、幼いエリーはルーちゃんに癒されていたのかしら。母親同士のお茶会の時にしか会えなかったから、数か月に一度ぐらいだったと思うけど。それでも、『ルーちゃんに会うと幸せそうに笑うのよね』て母親がよく言っていたわ」

「そうか、侍女科にいるのか。機会があれば会ってみたいな」

 レアの言葉に困惑顔のエマ。やってしまった、とでも思っているのだろうか。

「そうね、機会があれば……」

 エマの返答を聞いて、今まで黙って話を聞いていたエリザベスが言葉を放った。

「あるじゃない、今度。その機会が」

 したり顔で答えるエリザベスに、面倒そうに答えるエマ。

「駄目よ。お茶会の組み合わせに関しては、先生方も既に決めていらっしゃるわ。生徒の私たちが口を挟んで良い話ではないわ。それに、あの子たちのことはそっとしておいてあげて」

「お茶会か……楽しみだな」

 淑女科の上級生と侍女科の下級生による授業を思い出したのか、レアがつぶやいた。

 げんなりするエマに、楽しそうなエリザベスとレア。


 ルイーズの知らぬところで、なにやら様々な事が動きだしているようだ。


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