【完結】ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~

青依香伽

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第3章 侍女科

2 クラスメイト

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 侍女科に来てから二週間が経った。

 初日の授業は座学のみで、二日目からは実技の授業が始まったようだ。初めての事ばかりで付いて行くのに必死なルイーズとエリー。

 侍女科で先に学んでいたクラスメイトたちは、優雅さには少し欠けるが、丁寧な動きで無駄がない。そんな中、思うように動けない自分たちは、幼子になったかのような感覚に陥った二人。必死になるのも無理はない。

 最初の三日間は、実技の授業が始まると、そこには愕然とした顔をした二人がいた。しかし、日が経つにつれて〈グズグズしていたらいけない〉と思ったのか、二人は顔を見合わせ頷いた。

 お互いに鼓舞し合ったようで、落ち込むどころか、益々やる気になったようだ。

 しかし、そんな二人を心配してなのか、声を掛けてきたクラスメイトがいた。

「一緒にお昼ご飯でもどうですか?」

 端正な顔立ちをした背の高い少女が、二人に問いかけた。実技の時には、ひと際目を引いていたので、二人とも印象に残っていたようだ。

 ルイーズとエリーが顔を見合わせ頷き、彼女に返事をした。

「ありがとうございます、クレアさん。是非ご一緒させてください」

 ルイーズが答えると、クレアも微笑みながら頷いた。その時、三人に向かって足早に近づいてくる少女が一人。

「クレア、私も誘ってよ。待っていてって、言ったのに」

「ミアは作業中だったから、先にお誘いしていたのよ」

「そっか、ごめん。私も一緒に良いですか?」

 ミアはクレアに謝ると、ルイーズとエリーに問いかけた。

「もちろん」

 ルイーズとエリーが返事をすると、四人は足並みを揃えて歩き出した。四人はお弁当を持って裏庭に出たが、ベンチは全て人で埋まっていたため、大木の木陰になっている場所へ移動したようだ。

 クレアは、四人が座れるサイズの薄手のピクニックブランケットをバックから取り出して芝の上に敷いている。

「もしブランケットを使いたいときは、教室にも置いてあるから、それを使うと良いわ」

「そうなのね」「教えてくれてありがとう」

エリーが頷き、ルイーズが御礼を伝える。

お弁当を広げ食べ始めると、クレアが二人に話しかけた。

「侍女科に来てから二週間が経ったけど、授業やクラスには慣れたかしら?」

「今は、皆に付いて行くだけで必死ね」

「そうね、皆の早い動きに付いて行くだけで、私も一杯一杯だわ」

 エリーとルイーズが答えると、クレアが心配そうに二人に告げた。

「そろそろ疲れも出てくるころだと思うから、お休みの日はゆっくり休んで。それに、侍女科は体力勝負の所があるから、これからは体力をつけることも考えた方が良いわ」

 それを聞いて、頷くルイーズとエリー。

「そう、それ! 私もいつもマノン先生に言われてたわ。やっぱり姉妹ね。言うこともそっくり」

 ミアに暴露され、苦笑いのクレア。

「何となく似てると思ったら……。姉妹だったのね」とエリーが呟いた。

「そうなの。隠してるわけではないのだけど……。それから、姉も二人を心配していたわ。疲れが出てくるころだから、あまり無理をしてほしくないって。これから、家事以外の授業も増えるから、何かあったら相談してほしいと言っていたわ」

「そうなのね、ありがとう。何かあったらマノン先生に相談するわ」

ルイーズは苦手な〈御髪の整え方〉について、早速マノン先生に相談しようと思うのだった。


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