【完結】ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~

青依香伽

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第2章 ルイーズの気持ち

10 お茶会

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 エイミーから、修道院の話を聞いて数日が経った今日。

 リアムとミシェルが楽しみにしていたお茶会の日がやって来た。
 まず三人は、エイミーと共に朝食を食べた。リアムとミシェルは寝起きだったが、エイミーとの食事をとても喜んだ。
 そんな二人の姿を見たルイーズは、二人がエイミーとゆったり過ごせるように、三人で食後茶を飲むように勧めた。

 その間にルイーズとローラは、お茶会に出すためのお菓子の材料を確認する。この材料は、料理長が事前に用意してくれたので、準備はすぐに終わったようだ。

「二人とも、こんな早い時間に起きられるなら、これからは朝食とお散歩に誘おうかしら」

「それは難しいと思います」

「そうかしら。——ああ、そうだわ。ミシェルは可愛いものが大好きだし、今日はお花の形のクッキーでも焼こうかしら」
「お嬢様、甘いです。ミシェル様は色気より食い気、花よりケーキ、見た目より量です」

 それはそうだ、ミシェルはまだ三歳なのだ。好きなものが一番だ。
 その時、調理場にリアムとミシェルが入ってきた。

「僕たちもお手伝いします」

「わたしも」

「ありがとう、二人ともよろしくね。今日は、リアムの好きなブランマンジェとミシェルが食べたいフルーツがのったケーキね。先ずはブランマンジェを作りましょう。」

「姉上、僕がやります」

「わかったわ、このお鍋に入っているアーモンドミルクを使ってね。ローラ、リアムの補助をお願いできる?」

「かしこまりました」

「それなら、ミシェルは私と一緒にフルーツタルトを作りましょう」

「うん!」

 料理長があらかじめ、タルト生地とアーモンドミルクを準備してくれていたようだ。そのため早い時間に作業は終わり、後はそれらが冷え固まるのを待つだけとなった。

 いつもより早起きしたリアムとミシェルは、少しばかり眠そうだ。
 ルイーズは、お茶会の時間まで休むように二人に話した。

「寝てしまったら、お茶会前には起こすから、少し休んできなさい」
「絶対に起こしてください」「おこしてね」
「絶対に起こすから安心して」

 ルイーズは、リアムとミシェルを部屋に送ると、庭にあるテーブルセッティングを確認した。

「お嬢様、少しの間お休みください」
「ありがとう。ローラも少し休んで」

 それから小一時間ほどの時間が過ぎた。ルイーズは、ローラと一緒にリアムとミシェルの様子を見に行った。

 ♦

 玄関前には、エイミーとルイーズ、リアムとミシェルがエリーの到着を今か今かと待っていた。ルイーズ以外の三人は、エリーと会うのが久し振りのため、楽しみにしていたようだ。

 エリーの乗った馬車が到着すると、外に出てエリーを出迎えた。二人とも第二の姉のような存在のエリーが大好きなのだ。

「エリーさん」「えりーちゃん!」

「リアムくん、ミシェルちゃん、お出迎えありがとう。会えてうれしいわ! 久しぶりね」

「はい、お久しぶりです」

 そこにエミリーとルイーズがやってくると、エリーがエミリーに挨拶をした。

「叔母様、お久しぶりです。お会いできて嬉しいです」

「エリーちゃん、久しぶりね。元気そうで何よりだわ。皆さんもお変わりはないかしら」

「はい、皆 元気にしております。今日は、母が叔母様にお会いできないことを残念がっていました。近いうちにお会いしたいと申しておりました」

「そう、私も早く会いたいわ。そう伝えてもらえるかしら」

「はい」

「今日は、この子たちがお茶会のお菓子を作ったそうなの。どうか楽しんでいってね」

「ありがとうございます」

 ミシェルがエリーの手を引き庭に向かう。その後ろからは、リアムが照れくさそうに、ルイーズの手を引き二人を追いかけていく。

 それから四人で、料理長が用意してくれた軽食と、手作りのタルトとブランマンジェを食べながら、楽しい時間を過ごした。

 ルイーズとエリーは、顔を見合わせて笑っている。

 これから多忙になるルイーズとエリーにとって、幸せなひと時になったようだ。


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