【完結】ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~

青依香伽

文字の大きさ
上 下
16 / 84
第2章 ルイーズの気持ち

7 報告

しおりを挟む
 
 事務室から教室へ戻ったルイーズは、エリーを見つけるとすぐさま近くへ駆け寄った。

「ルイーズ、おはよう。どうしたの、何かあったの?」
「エリー、おはよう。今、事務室に行ってきたの。急遽、院長先生とソフィア先生に面接をしていただけることになって、そこで転科の許可をもらったわ」
「えっ、もう面接をしたの? 早いわ……。でも、嬉しい。」

 口調は抑えているが興奮気味のルイーズに、エリーは驚きと嬉しさで、中々言葉が出てこないようだ。
 その時、始業の鐘が鳴り、急いで着席をする二人。その日は二人ともが嬉しさのあまり、そわそわと落ち着かない一日を過ごした。

 ♦

 屋敷へ戻ったルイーズは、出迎えてくれたトーマスとローラ、そして御者のモーリスに、学院から転科の許可が出た事を伝えた。
 今日は父親が仕事で不在のため、リアムとミシェルに会いに行った後は、母親の元に行っても大丈夫かの確認を取った。ルイーズは、ローラがマーサの元へ行くのを見ると、二人の所へ向かった。

「リアム、ミシェル、ただいま」
「姉上、お帰りなさい」「ねえたま、おかえり」

 ルイーズは、笑顔で出迎えた二人を同時に抱きしめた。

 キャッキャと喜ぶミシェルに、何かあったのかと心配するリアム。

「急にごめんなさい。今日は嬉しいことがあったの」

 ほっと安心するリアム。

「嬉しいことなのですね、それなら良かったです」

「ねえたま、うれしいの? よかったね」

「二人ともありがとう、また後でお話しましょうね。それから……約束をしたお茶会だけど、三人でお菓子を作るでしょう。その時に、二人が食べたいと思うお菓子を、後で教えてくれる?」

「分かりました。ミシェルと考えておきます」

「ミシェルケーキたべたい」

「わかったわ、どんなケーキが食べたいか、後でお姉さまに教えてね。リアムもね」

「分りました」「うん、わかった」

 二人と約束を交わしてから部屋を出ると、廊下ではローラが待っていた。ローラがマーサに確認をして、こちらに知らせてくれたようだ。
 ルイーズは、部屋で待っているエイミーの元へ急いで向かった。部屋の前に着くと、ドアをノックするルイーズ。

「お母様、ルイーズです」
「どうぞ、入って」

 部屋に入ると、エイミーはソファーに座ってルイーズが来るのを待っていた。

「失礼します。お母様、ごめんなさい。今日は、どうしても早くお母様にお話しをしたかったので、二人は一緒ではないのです」

「そんな時もあるわ。二人には、夕食の時にも会えるのだから、気にしなくて良いのよ」
「はい」
「ルイーズ、ここに座って。お話があるのでしょう」

 ソファーへ座るように促され、ルイーズはエイミーの横に腰をおろした。

「お母様、昨日はありがとうございました。お父様に口添えしてくださったのでしょう?」

「そうね。お父様は、貴女に苦労してほしくないとおっしゃっていたわ。親として、その気持ちもわかるのよ。でも、貴女が『新しいことに挑戦したい』と言ったとき、私は嬉しかったの。
私は、学生の時に興味を持ったことがあっても、何もせずにその思いに蓋をしたわ。貴族令嬢として……、その思いが強かったのね。時代が許さなかったとしても、何かできたはず……。今なら、そう思うわ。だから、ルイーズとリアム、そしてミシェルの三人には、自分の気持ちを大切にしてほしいと思っているの」

 母親の発言にあった、《貴族令嬢として》。それを聞いたルイーズは、この数日間、自身も何度そのことを考え、悩んだかを思い出した。だから、母親が自分の思いに蓋をしたことも良くわかるのだ。それでも、母は自分のことを応援してくれている。ルイーズは、母親に感謝の念を抱いたようだ。

「お母様ありがとう。私、頑張るわ」

 頷き返すエイミーに、ルイーズは今日の出来事を話し始めた。

「今日は、転科手続きのために事務室に行きました。その時、淑女科のソフィア先生と院長先生が、その場で面接をしてくれました。本当は、他の先生も交えて面接を行うそうですが、三人で面接をして、その場で転科を許可していただけました」

「そうなの、それは急展開ね」

「はい。その後、院長先生から『中々難しいことだけど、今の気持ちを持ち続けて。その気持ちを忘れなければ大丈夫』とお言葉を貰いました。院長先生と、対面でお話したことが初めてだったので、緊張しましたがとても嬉しかったです」

「そう……、院長先生が……」

エイミーは昔を懐かしむように、話し始めた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!

仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。 ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。 理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。 ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。 マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。 自室にて、過去の母の言葉を思い出す。 マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を… しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。 そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。 ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。 マリアは父親に願い出る。 家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが……… この話はフィクションです。 名前等は実際のものとなんら関係はありません。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

【完結】婚約者を譲れと言うなら譲ります。私が欲しいのはアナタの婚約者なので。

海野凛久
恋愛
【書籍絶賛発売中】 クラリンス侯爵家の長女・マリーアンネは、幼いころから王太子の婚約者と定められ、育てられてきた。 しかしそんなある日、とあるパーティーで、妹から婚約者の地位を譲るように迫られる。 失意に打ちひしがれるかと思われたマリーアンネだったが―― これは、初恋を実らせようと奮闘する、とある令嬢の物語――。 ※第14回恋愛小説大賞で特別賞頂きました!応援くださった皆様、ありがとうございました! ※主人公の名前を『マリ』から『マリーアンネ』へ変更しました。

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

出来レースだった王太子妃選に落選した公爵令嬢 役立たずと言われ家を飛び出しました でもあれ? 意外に外の世界は快適です

流空サキ
恋愛
王太子妃に選ばれるのは公爵令嬢であるエステルのはずだった。結果のわかっている出来レースの王太子妃選。けれど結果はまさかの敗北。 父からは勘当され、エステルは家を飛び出した。頼ったのは屋敷を出入りする商人のクレト・ロエラだった。 無一文のエステルはクレトの勧めるままに彼の邸で暮らし始める。それまでほとんど外に出たことのなかったエステルが初めて目にする外の世界。クレトのもとで仕事をしながら過ごすうち、恩人だった彼のことが次第に気になりはじめて……。 純真な公爵令嬢と、ある秘密を持つ商人との恋愛譚。

あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです

じじ
恋愛
「あんな女、金だけのためさ」 アリアナ=ゾーイはその日、初めて婚約者のハンゼ公爵の本音を知った。 金銭だけが目的の結婚。それを知った私が泣いて暮らすとでも?おあいにくさま。あなたに恋した少女は、あなたの本音を聞いた瞬間消え去ったわ。 私が金づるにしか見えないのなら、お望み通りあなたのためにお金を用意しますわ…ただし、利子付きで。

婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!

志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。 親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。 本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。

処理中です...