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第2章 ルイーズの気持ち
7 報告
しおりを挟む事務室から教室へ戻ったルイーズは、エリーを見つけるとすぐさま近くへ駆け寄った。
「ルイーズ、おはよう。どうしたの、何かあったの?」
「エリー、おはよう。今、事務室に行ってきたの。急遽、院長先生とソフィア先生に面接をしていただけることになって、そこで転科の許可をもらったわ」
「えっ、もう面接をしたの? 早いわ……。でも、嬉しい。」
口調は抑えているが興奮気味のルイーズに、エリーは驚きと嬉しさで、中々言葉が出てこないようだ。
その時、始業の鐘が鳴り、急いで着席をする二人。その日は二人ともが嬉しさのあまり、そわそわと落ち着かない一日を過ごした。
♦
屋敷へ戻ったルイーズは、出迎えてくれたトーマスとローラ、そして御者のモーリスに、学院から転科の許可が出た事を伝えた。
今日は父親が仕事で不在のため、リアムとミシェルに会いに行った後は、母親の元に行っても大丈夫かの確認を取った。ルイーズは、ローラがマーサの元へ行くのを見ると、二人の所へ向かった。
「リアム、ミシェル、ただいま」
「姉上、お帰りなさい」「ねえたま、おかえり」
ルイーズは、笑顔で出迎えた二人を同時に抱きしめた。
キャッキャと喜ぶミシェルに、何かあったのかと心配するリアム。
「急にごめんなさい。今日は嬉しいことがあったの」
ほっと安心するリアム。
「嬉しいことなのですね、それなら良かったです」
「ねえたま、うれしいの? よかったね」
「二人ともありがとう、また後でお話しましょうね。それから……約束をしたお茶会だけど、三人でお菓子を作るでしょう。その時に、二人が食べたいと思うお菓子を、後で教えてくれる?」
「分かりました。ミシェルと考えておきます」
「ミシェルケーキたべたい」
「わかったわ、どんなケーキが食べたいか、後でお姉さまに教えてね。リアムもね」
「分りました」「うん、わかった」
二人と約束を交わしてから部屋を出ると、廊下ではローラが待っていた。ローラがマーサに確認をして、こちらに知らせてくれたようだ。
ルイーズは、部屋で待っているエイミーの元へ急いで向かった。部屋の前に着くと、ドアをノックするルイーズ。
「お母様、ルイーズです」
「どうぞ、入って」
部屋に入ると、エイミーはソファーに座ってルイーズが来るのを待っていた。
「失礼します。お母様、ごめんなさい。今日は、どうしても早くお母様にお話しをしたかったので、二人は一緒ではないのです」
「そんな時もあるわ。二人には、夕食の時にも会えるのだから、気にしなくて良いのよ」
「はい」
「ルイーズ、ここに座って。お話があるのでしょう」
ソファーへ座るように促され、ルイーズはエイミーの横に腰をおろした。
「お母様、昨日はありがとうございました。お父様に口添えしてくださったのでしょう?」
「そうね。お父様は、貴女に苦労してほしくないとおっしゃっていたわ。親として、その気持ちもわかるのよ。でも、貴女が『新しいことに挑戦したい』と言ったとき、私は嬉しかったの。
私は、学生の時に興味を持ったことがあっても、何もせずにその思いに蓋をしたわ。貴族令嬢として……、その思いが強かったのね。時代が許さなかったとしても、何かできたはず……。今なら、そう思うわ。だから、ルイーズとリアム、そしてミシェルの三人には、自分の気持ちを大切にしてほしいと思っているの」
母親の発言にあった、《貴族令嬢として》。それを聞いたルイーズは、この数日間、自身も何度そのことを考え、悩んだかを思い出した。だから、母親が自分の思いに蓋をしたことも良くわかるのだ。それでも、母は自分のことを応援してくれている。ルイーズは、母親に感謝の念を抱いたようだ。
「お母様ありがとう。私、頑張るわ」
頷き返すエイミーに、ルイーズは今日の出来事を話し始めた。
「今日は、転科手続きのために事務室に行きました。その時、淑女科のソフィア先生と院長先生が、その場で面接をしてくれました。本当は、他の先生も交えて面接を行うそうですが、三人で面接をして、その場で転科を許可していただけました」
「そうなの、それは急展開ね」
「はい。その後、院長先生から『中々難しいことだけど、今の気持ちを持ち続けて。その気持ちを忘れなければ大丈夫』とお言葉を貰いました。院長先生と、対面でお話したことが初めてだったので、緊張しましたがとても嬉しかったです」
「そう……、院長先生が……」
エイミーは昔を懐かしむように、話し始めた。
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