【完結】ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~

青依香伽

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第2章 ルイーズの気持ち

4 ルイーズの決心

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 屋敷に戻ったルイーズは、リアムとミシェルがいるであろう図書室に向かった。

「リアム、ミシェル」

 二人は姉の声に気付くと、読んでいた絵本から顔を上げて返事をした。

「姉上、お帰りなさい」「ねえたま、おかえり」

「ただいま。二人とも絵本を読んでいたの?」

「はい」「にいたまにね、よんでもらったの」

「そう、ミシェル良かったわね。リアムありがとう」

 頷くリアムと笑顔のミシェル。

「そうだわ……。今日は二人に嬉しいお知らせがあります」

「何ですか」「なぁーに?」

「週末にエリーが我が家に遊びに来ます。二人とも何か予定はありますか?」

「エリーさんが……。予定はありません!」「ありましぇん!」

「そう、それなら良かったわ。当日は、エリーのために美味しいお菓子を三人で作って、お出迎えしましょうね」

「はい、楽しみです」「うん!」

 エリーから「週末に屋敷へ訪ねていいか」と聞かれたルイーズは、嬉しさからすぐさま了承した。今思えば、あれは自分を心配したエリーの気遣いだったのだ、とルイーズは思った。
 ルイーズは、目の前で喜ぶ二人を見つめながら、そんなエリーの気遣いに感謝した。



 二人の喜ぶ姿を微笑ましく思いながら、図書室を後にしたルイーズ。
 先ほど出迎えてくれた執事のトーマスに、父の所在を確認するや否や、侍女のローラと一緒に理解しているという顔つきで頷かれた。
 二人は自分の顔を見ただけで、いつでも察してしまう。ルイーズは、そんな二人に感心しながら父親の執務室に向かった。

 執務室には、父親のルーベルトと母親のエイミーが二人並んでソファーに座っていた。
 さすが、出来る執事トーマスは、ルイーズの様子を見てエイミーにも声を掛けたようだ。

「ただいま戻りました、ルイーズです」

「どうぞ、入っていいよ」

 部屋の中からルーベルトが返事をした。

「失礼いたします」

「ああ、今日はどうしたのかな?」

 何故かルーベルトも緊張しているようだ。微妙に声が上擦っている。その声に釣られてか、ルイーズも少しばかり緊張したが、意を決して話し始めた。

「先日、これからのことを考える時間をくださいとお願いしたことを覚えていらっしゃいますか?」

「ああ、もちろんだよ」

 何故か不安そうな顔で頷くルーベルトと、それに対し口火を切るルイーズ。

「あれから、これからのことを自分なりに考えたのです。今の私に何ができるのか、何がしたいのか。新しい婚約者はどうするのか。考えても、今の私に出来ることは分かりませんでした。新しい婚約者についても、今は考えられません。でも、やってみたいと思えるものが見つかったのです。
私、侍女科で様々な経験をしたり、新しいことに挑戦してみたいのです。どうか、侍女科で学ぶことを認めていただけませんか」

「…………」

「気持ちは決まっているのね」

「はい」

 固まったままのルーベルトとは違い、エイミーはルイーズの表情を見て安心した様子だ。執事のトーマスや侍女のローラからも、考え込むルイーズの話を聞いていたのだろう。まさかこんなにも早く、思いの丈を聞かせてもらえるとは思っていなかったようだが。  

 我に返ったルーベルトは、ルイーズに尋ねた。

「淑女科が嫌なのか? 嫌ではないのなら、今のままで良いじゃないか。新しい婚約者を探すから、もう少し待っていなさい」

「あなた!」

「坊ちゃま!」

「坊ちゃまじゃない!」

 大人たちのあたふたする様子を、呆然とした様子で見守るルイーズ。

「ルイーズ、お父様とお話をするから、お部屋に戻って宿題でもしていらっしゃい」

 ルイーズは、笑顔のエイミーに頷き返すと部屋を後にした。

 その後の執務室では、母親のエイミーと執事のトーマスから、お説教をされる父親ルーベルトの姿があったとか、なかったとか。

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