【完結】ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~

青依香伽

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第1章 ブラン家

6 私にできること

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 あれからすぐに、ルーベルトはルイーズのお願いに対して了承の返事をくれた。

 父親との話が終わり部屋に戻ったルイーズは、ベッドに腰掛けて、先ほど起きたことを一人静かに考えていた。

 婚約が解消から白紙になったこと。父親が自分の希望を聞き入れてくれたこと。
 今日は濃厚な一日だったと振り返りながら、オスカーの様子を思い出すルイーズ。

 オスカーが急変した様子は明らかにおかしかった。明確な原因があるのか、いくつかの要因が重なったものなのか、現時点では全くわからない。この段階で、自分がどうこうできるものではない。何かわかったとしても、婚約を白紙にするルイーズが首を突っ込んでいい話ではない。

 結局は父親が男爵に話していた通り、しばらく様子をみることしかできないと、ルイーズは思考を手放した。

 ♦

 腰掛けていたベッドから立ち上がり、机に向かって歩き出す。椅子を引いてそこに座ると、使い慣れた机の引き出しを開けて日記を取り出した。幼少の頃より続けている一言日記だ。
 今日は一言では終わりそうにないと思いながら、昨日の続きのページを開いて物事が起こった順に書き記していく。その横には結果や感想を一言添えて。


  エリーと行った庭園でオスカーと女の子を見かけた——とても驚いた。
  エリーが淑女科から侍女科に転科することを聞いた——すごく寂しい
  オスカーから婚約解消の申し出があった(結果的には婚約白紙)——ほっとした
  お父様にしばらくの間は婚約を望んでいないこと、考える時間が欲しいことを伝えた——どちらも了承してもらえた


 今日は色々なことがあり過ぎたようだ。日記を閉じて引き出しへ片付けると、一緒にしまってあった予備のノートを取り出した。

 一冊のノートを用意して、表紙には「L」の文字を書く。日記ではなく、自分と向き合うためのノート、Lノートだ。

 エリーの決意に触発されて、ルイーズもこれからのことを真剣に考えてみることにしたようだ。

 まずは自分について書いてみるようだ。


* * * * * * *

ルイーズ・ブラン ブラン子爵家 長女 16歳

カルディニア王国 出身
カルディニア王国女学院1年生 淑女科

髪色:ダークブラウン 髪の長さ:腰までのロングヘアー
瞳の色:グリーンアイ

(家族)
父 ルーベルト・ブラン 42歳
母 エイミー・ブラン 38歳
弟 リアム・ブラン 8歳
妹 ミシェル・ブラン 3歳

大切なもの:家族・家族同然の使用人のみんな・友人
好きなもの:植物(特にお花)・園芸・お菓子
嫌いなもの:特になし
得意なこと:料理(特にお菓子作り)

* * * * * *


 書き出した内容を読み返すルイーズ。

(これ以上は……、なにもないかな……)


 ——侍女科のカリキュラムは家庭的なこと全般を学ぶ授業が多い
 ——もしルイーズが一緒だったら

 ノートの端にエリーから言われた言葉を綴っているようだ。きっと、カフェでエリーから言われたことを思い出しているのだろう。
 エリーは何気なく言ったことかもしれないが、気持ちが落ちていたルイーズにとっては、嬉しい言葉だったようだ。

「私ができることって……、何だろう……」

 考えに煮詰まっていると、ルイーズの部屋をノックする音と共に、可愛い声が聞こえてきた。

「姉上」「ねえたまっ!」

 ルイーズはその声を聞くだけで、頬が緩み口角が上がる。
 愛する弟と妹の声だ。

「どうぞ! 入って良いわよ」

 普段は、帰宅すると弟と妹の部屋に向かうのだが、今日は男爵とオスカーに対応していたために、二人にはまだ会えていなかったのだ。

 思考の沼に嵌まっていたルイーズは、考えることを一旦止めて、部屋に入ってくる二人に笑顔を見せた。



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