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本編
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俺の肩を掴んだ五紀の手に、そのまま俺をうつ伏せに押しつぶすように力が加えられる。上半身が布団に沈み込み、それに抵抗するように踏ん張ると自然と腰が布団から浮いた格好になった。あ、と思うよりも先に五紀は俺の下着をも抜き去ってしまった。靴下以外の全ての衣服を剥ぎとられた間抜けな姿を五紀に晒していることが恥ずかしく、尻だけでもどうにか隠せればと手を後ろに伸ばしたが、その手も五紀に絡みとられてしまう。指の間に五紀の指が差し込まれ、ギュッと密着するように握られるとそれだけで期待に体が跳ねた。五紀よりも俺の方が10cmほど背が高いが、手の大きさはそんなに変わらない。親指で手の甲を撫でられるだけで達しそうな気分になる。
五紀にふさわしくない、浅ましい俺の体を五紀にだけは知られたくなかったのに、目も当てられないほど惨めなのに、どうしてこんな時でも気持ちいいなんて思ってしまうのだろう。快感で真っ白になりそうな頭の中に確かな罪悪感があって、思わずこぼれ落ちた涙を布団に滲ませて誤魔化した。
「よかった、ちゃんと濡れてるね。指入れるよ」
「っ……!」
五紀の指が肛門をくるくると優しく撫でている。緊張を解すような優しい触り方に、拒否するべきだとわかっていても体が緩んでしまい、そのままゆっくりとアナルに指が挿入されていく。普段自分で触る時よりもずっと優しい指の動きに五紀の優しさを感じてしまうと、もうダメだった。
「ん、あぁ……っ♡」
五紀の細長い指を締め付けるように腸壁が収縮を繰り返した。ゆっくりと奥に進んでいた指の動きが止まり、おそらく根元まで呑み込んだのだろうとわかった。指の先で優しく前立腺を撫でられると、それだけで満ち足りたように体が歓喜に震える。布団を手繰り寄せてそこに顔を埋めた。耐えず落ちる涙は嬉しいからなのか悲しいからなのか、ぼやけた頭では判断できなかった。
「指、増やすね」
わざわざ言わなくたっていいのに、五紀はこんな時でも律儀に俺の耳元でそう囁いた。一旦指が引き抜かれ、宣言通りに少し本数を増やした指がアナルに挿入された。濡れた腸壁をみちみちと割って入ってくる五紀の指を、無意識のうちにぴったりと張り付くようにして締め付けてしまった。奥へ奥へと誘うような中の動きに、五紀には俺の体が喜んでいることが丸わかりだろうと思うと、耐えられずにほとんど埋もれるような形で布団へと顔を押し付けた。
優しくゆっくりと、しかし確かに中で指をピストンされ、リズミカルに前立腺が指先で弾かれる。規則的な動きが返ってもどかしく、指先が前立腺に触れる一瞬、とても強く中が痙攣した。マッサージのように優しい指遣いに柔らかくなった腸壁は、もっと奥までの刺激が欲しくて疼いている。
「っ、ん゛……っ」
「声……もっと聞かせてくれてもいいのに。僕が相手じゃ物足りない?」
「は、……っ、っ」
五紀が相手で物足りないなんて、そんなことがあるはずもなかった。五紀とこうなることをずっと望んでいたのだから。こんな状況でも、触れられて確かに嬉しく思ってしまっているのだ。
「ぅ、あ……あっ、ひっ、っ……」
呻くような嬌声には次第に嗚咽が混ざり出して、聞き難い声になっているのだろうと思うと酷く申し訳ない。自分の痴態を見せてしまっている罪悪感ももちろんだが、それよりも五紀にこんなことをさせてしまった俺の不甲斐なさが辛かった。
五紀は必死で自分のΩというバース性に抗おうとしていたのに、思い出させるような行為をさせてしまってごめん。五紀の好意を受け入れて、好きだって告白したのにこんなことにしてごめん。Ω同士だって幸せになれるって思ってたのに、五紀がΩであることを責めるようなことをしてしまって……、俺は……。
ぱらぱらと、たくさんの思考が頭の中で弾けては何度も俺に罪を自覚させる。こんなにもたくさん五紀を傷つけておいて、それでいて今もなお五紀を傷つけ続けている。今更どんなふうに五紀の前で振る舞えばいいのかわからなくて、呼吸が苦しくなるほど布団に顔を押し付けた。いっそこのまま呼吸が止まってしまえばいいのにとさえ思った。
「優……」
五紀はまるで慰めるみたいに、震える俺の背を優しく撫でた。俺がヒートの時にも労わるようにこの手が俺を撫でてくれたことを思い出すと、まるでパブロフの犬のように、俺の体から力が抜けてゆく。まだ横隔膜は痙攣するものの、子供のような嗚咽も段々と自分の意思で抑えられるようになった。今度は頭を優しく撫でられ、項にリップ音をたててキスをされたようだった。剥き出しの急所を意識させられる熱に、俺は思わず中に入れられたままの五紀の指を締め付けた。
「えらいね、大丈夫だよ……」
とろけてしまいそうなほど甘い声でささやいた後、五紀は項から肩を移動するようにキスを繰り返しながら、止まっていた中の愛撫を再開させた。敏感になっていた前立腺を再び刺激され、快感を呼び覚まされた下半身がガクガクと震える。快感の強さに思わず逃れようとして腰をくねらせて尻を左右に振るが、ずっぽりと根元まで咥え込んでいる指はそんな俺の動きにもしっかりと付いてきてしまうようで、むしろさっきよりも気持ちが良いところに当たった。
「んあっ♡ぅ、あ、あ……っ♡♡」
トントンと前立腺を指の腹で撫でられる度に勝手に腰が反り、五紀に尻を押しつけるように突き出してしまう。熱を孕んだ五紀の息が項にかかる。
「そろそろ大丈夫そうかな……優、挿れるね」
五紀にふさわしくない、浅ましい俺の体を五紀にだけは知られたくなかったのに、目も当てられないほど惨めなのに、どうしてこんな時でも気持ちいいなんて思ってしまうのだろう。快感で真っ白になりそうな頭の中に確かな罪悪感があって、思わずこぼれ落ちた涙を布団に滲ませて誤魔化した。
「よかった、ちゃんと濡れてるね。指入れるよ」
「っ……!」
五紀の指が肛門をくるくると優しく撫でている。緊張を解すような優しい触り方に、拒否するべきだとわかっていても体が緩んでしまい、そのままゆっくりとアナルに指が挿入されていく。普段自分で触る時よりもずっと優しい指の動きに五紀の優しさを感じてしまうと、もうダメだった。
「ん、あぁ……っ♡」
五紀の細長い指を締め付けるように腸壁が収縮を繰り返した。ゆっくりと奥に進んでいた指の動きが止まり、おそらく根元まで呑み込んだのだろうとわかった。指の先で優しく前立腺を撫でられると、それだけで満ち足りたように体が歓喜に震える。布団を手繰り寄せてそこに顔を埋めた。耐えず落ちる涙は嬉しいからなのか悲しいからなのか、ぼやけた頭では判断できなかった。
「指、増やすね」
わざわざ言わなくたっていいのに、五紀はこんな時でも律儀に俺の耳元でそう囁いた。一旦指が引き抜かれ、宣言通りに少し本数を増やした指がアナルに挿入された。濡れた腸壁をみちみちと割って入ってくる五紀の指を、無意識のうちにぴったりと張り付くようにして締め付けてしまった。奥へ奥へと誘うような中の動きに、五紀には俺の体が喜んでいることが丸わかりだろうと思うと、耐えられずにほとんど埋もれるような形で布団へと顔を押し付けた。
優しくゆっくりと、しかし確かに中で指をピストンされ、リズミカルに前立腺が指先で弾かれる。規則的な動きが返ってもどかしく、指先が前立腺に触れる一瞬、とても強く中が痙攣した。マッサージのように優しい指遣いに柔らかくなった腸壁は、もっと奥までの刺激が欲しくて疼いている。
「っ、ん゛……っ」
「声……もっと聞かせてくれてもいいのに。僕が相手じゃ物足りない?」
「は、……っ、っ」
五紀が相手で物足りないなんて、そんなことがあるはずもなかった。五紀とこうなることをずっと望んでいたのだから。こんな状況でも、触れられて確かに嬉しく思ってしまっているのだ。
「ぅ、あ……あっ、ひっ、っ……」
呻くような嬌声には次第に嗚咽が混ざり出して、聞き難い声になっているのだろうと思うと酷く申し訳ない。自分の痴態を見せてしまっている罪悪感ももちろんだが、それよりも五紀にこんなことをさせてしまった俺の不甲斐なさが辛かった。
五紀は必死で自分のΩというバース性に抗おうとしていたのに、思い出させるような行為をさせてしまってごめん。五紀の好意を受け入れて、好きだって告白したのにこんなことにしてごめん。Ω同士だって幸せになれるって思ってたのに、五紀がΩであることを責めるようなことをしてしまって……、俺は……。
ぱらぱらと、たくさんの思考が頭の中で弾けては何度も俺に罪を自覚させる。こんなにもたくさん五紀を傷つけておいて、それでいて今もなお五紀を傷つけ続けている。今更どんなふうに五紀の前で振る舞えばいいのかわからなくて、呼吸が苦しくなるほど布団に顔を押し付けた。いっそこのまま呼吸が止まってしまえばいいのにとさえ思った。
「優……」
五紀はまるで慰めるみたいに、震える俺の背を優しく撫でた。俺がヒートの時にも労わるようにこの手が俺を撫でてくれたことを思い出すと、まるでパブロフの犬のように、俺の体から力が抜けてゆく。まだ横隔膜は痙攣するものの、子供のような嗚咽も段々と自分の意思で抑えられるようになった。今度は頭を優しく撫でられ、項にリップ音をたててキスをされたようだった。剥き出しの急所を意識させられる熱に、俺は思わず中に入れられたままの五紀の指を締め付けた。
「えらいね、大丈夫だよ……」
とろけてしまいそうなほど甘い声でささやいた後、五紀は項から肩を移動するようにキスを繰り返しながら、止まっていた中の愛撫を再開させた。敏感になっていた前立腺を再び刺激され、快感を呼び覚まされた下半身がガクガクと震える。快感の強さに思わず逃れようとして腰をくねらせて尻を左右に振るが、ずっぽりと根元まで咥え込んでいる指はそんな俺の動きにもしっかりと付いてきてしまうようで、むしろさっきよりも気持ちが良いところに当たった。
「んあっ♡ぅ、あ、あ……っ♡♡」
トントンと前立腺を指の腹で撫でられる度に勝手に腰が反り、五紀に尻を押しつけるように突き出してしまう。熱を孕んだ五紀の息が項にかかる。
「そろそろ大丈夫そうかな……優、挿れるね」
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