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本編
10※
しおりを挟む「ん……っ♡」
ローションなんて必要のないほど濡れたアナルは、まさしくΩの象徴だ。ここにαのペニスを咥えて孕むため懸命に愛液を垂れ流している。指を一気に奥まで入れれば、中できゅっと締め付けられた。腸壁の収縮する動きだけでも快感を覚えてしまう。アナルの中をかき回すように指で大きく腸壁を撫でれば背筋が勝手に震えた。
「ぉあ♡っ……っん♡」
もっと太いものが欲しい。指で触れられない奥まで貫かれたい。
指を増やし、中指と薬指でアナルの中をぐっと解すように押せばペニスを触るだけでは得られない快感が背中を伝う。あまりの快感にガクガクと震えてしまう足を奮い立たせながら、俺は指を動かし続けた。
「あっ♡あ~~っ♡んぁ、そこぉ……っ♡♡」
指先に触れるしこりを撫でるように優しく何度も押せば、それだけで射精してしまいそうなほど気持ちが良かった。快感のあまり指をぎゅうぎゅうと締め付けるように腸内が圧迫してくる。粘度の高い愛液と腸内の締め付けで指を動かすことが困難になってきた俺はいったん指をアナルから抜き、ディルドを手に取った。
「う、あ……♡はぁ……っ」
アナルから指を抜く小さな刺激ですら快感に変わっていく。震える体をどうにか動かしながら、コンドームをディルドに装着した。俺のペニスよりも少しサイズの大きいディルドは、シリコンでできていて程よい硬さと弾力がある。ゴムをつけたディルドの亀頭部分をアナルに擦り付けるように動かせば、中から垂れてきた愛液がぴちゃぴちゃと音を立てて中への挿入を期待している。
「ん、ん♡これで、奥をたくさん……っ♡」
バックで突かれるような体制でうつ伏せになり、震える手でディルドをアナルへ挿入していく。ぬちゃ、と粘着質な音を立てながらディルドがアナルに少しずつ入っていく感覚に、吐く息は喘ぎ声へ変わってしまう。
「は、あ♡あ~~っ♡♡ふ、ん……っ、あっ♡」
亀頭まで入れたところで挿入する手を止め、休憩を挟んだ。何度かこのディルドをアナルへ入れて自慰をしたことがあるが、それでも慣れないものは慣れない。理性を奪われそうな興奮と快感の中でも、異物が自分の中へ入っていく感覚はどこか怖かった。
……五紀だったら良かったのにと、そう思ってしまう思考が無機質なディルドを拒んでいるのかもしれない。
「ん、んっ♡あ……っ」
狭い腸内を指よりもずっと太くて長いディルドが押し開いていく。少しずつ入れていくと、ディルドの亀頭の凹凸や模られた血管までをも感じられる気がする。それほどまでに腸壁はぎゅうぎゅうとディルドを締め付けて挿入されたことを喜んでいた。
「あ~~っ♡だめ、そこっ♡気持ち、いい……っ♡♡」
ディルドの亀頭部分で体の奥のしこりをグリグリと押すと、開発されたそこは信じられないほどの快楽を体にもたらす。ビクビクと勝手に体が痙攣し、腸壁はぎゅっぎゅっと収縮を繰り返してディルドの形を覚えるように締め付けた。
「ん!んぅ~~っ♡♡あっ♡ぅあ~~っ……っ♡♡ん、だめっ……そこ、だめっ♡」
気持ちがいい。このずっと続く射精感のような快楽が心地いい。何も考えなくて済むこの瞬間だけが、余計なことを考えて落ち込んでしまう俺の心を軽くさせてくれる。頭が馬鹿になって何も考えられないこの瞬間が、俺はたまらなく好きだった。
「あ~~っ、い、くぅ♡もういく……っ♡」
とどめと言わんばかりにディルドを根本まで押し込めば、あっけなく射精してしまった。ビュッビュッと自分の意思には関係なく、ディルドで突き上げる動きとともにペニスから精液が勝手に漏れる。
「っあ♡あっ♡あぁ~~~~っ♡♡」
体から力が抜けて俺はそのまま床にくたっとうつ伏せで倒れ込む。快楽の余韻で体が震えたまま、荒い息を落ち着かせるように呼吸を整えようと深呼吸をした。
「んっ♡はーっ、はーっ……」
大きく息を吸い込み吐き出すと、次第に気持ちも落ち着いてきた。昂っていた熱が体から引いていくのがわかる。真っ白になっていた頭の中が、次第に冷静になっていく。
「……五紀」
熱が引いた後、虚しくなるのはいつものことだった。隣に五紀がいてくれないことにどうしても虚しさを覚えてしまう。俺の勝手な妄想が、いつか現実になってくれないかと願ってしまう。
「馬鹿馬鹿しい妄想だな……」
五紀に抱いてくれなんて言えるわけがない。言っていいわけがない。
五紀から俺に告白してくれたとは言え、俺は五紀の人生を狂わせてしまった自覚がある。望めばなんでも叶えられるような環境と実力を持つ五紀に、俺はどこまでも相応しくなかった。どこまでいっても結婚できないΩとΩ……五紀と俺の関係は、決して人に知られてはいけない。
それでも俺は確かに幸せだった。五紀の未来を奪ってしまった罪悪感と同じくらい、そばにいられることに幸福感を抱いてしまった。だからこそ、五紀を好きになればなるほど俺は五紀に「好き」と言えなくなっていた。好きという言葉で五紀を縛ってしまったら、もう戻れなくなってしまうと思ったから。
「五紀は、俺とは違うのに」
五紀は俺とは違って誰とでも番になれるだろう。望めばどんなαも虜にしてしまうような、そんな魅力的な男なんだから。俺にはもったいないとわかっていても、どうしても五紀を手放すことはできなかった。
胸に触れる金属を指で撫でる。小さな鍵……これが、俺と五紀を結びつけるたった一つの物。この鍵だけが誰も知らない俺と五紀の関係を確かに証明してくれる。
「……好きになってごめん……」
これからも俺は五紀を手放すことはできないんだろう。こうして悶々とした気持ちを抱えたまま、五紀に触れられる妄想で自慰をして、そしてずっとこうして罪悪感に囚われ続ける。こんな不毛な関係は間違いだとわかっていながら、耳に馴染む綺麗な声で名前を呼ばれたり、少し冷たい指に手を繋がれたり、ただ一緒にいるだけで……全てどうでも良くなってしまう。
俺なんて見捨てて欲しいと思う気持ちと、ずっと五紀の一番でいたいという気持ちで、俺の心はいつもぐちゃぐちゃだった。
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