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第32話『テイマー職は奴隷商!?』
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エリィの瞳に暗い炎が宿っていた。
彼女の父への愛は憎しみへと転じていた。
……いや、ちがう。
そうじゃない。
エリィが睨みつけているのはアーサルトではなかった。
視線の先に居たのはエレナだ。
「……」
エリィはむしろ無表情に近い顔をしている。
しかし、視線だけは異様なまでに煌々と強い憎悪を宿していた。
今にも一線を越えてしまいそうな、そんな危うい雰囲気。
奇しくもそれは、エレナがレイプされているのを目撃したアーサルトと瓜ふたつであった。
「ったく白けちまったなァ。で、最初の話はなんだったっけか? もう忘れかけちまってらァ」
「……僕がエレナの代わりに奴隷に堕ちる。だから、彼女を解放してくれ。英雄であるこの身体ならば、釣り合うはずだ」
「あ~、そォだったそォだった。まァ、いいぜ? 商人にとしちゃァ、利益が高いほうを選ぶことに否やはねェ。特別だぜ? ……オイ、『破魔の拘束具』を持って来い!」
「らじゃーっす」
奴隷商人のひとりが返事をして、木箱の中へと手を突っ込む。
ジャラジャラと音を立てて取り出したのは、石でできた手錠だった。
「片腕片足だろうと装着してもらう。あの規模の魔法をポンポン放たれちゃァ、かなわねぇからな」
「わかっている。だが、お願いだ。先にエレナに<ヒール>を使わせてくれ」
アーサルトがちらりと、エレナのぐちゃぐちゃになった性器をへと視線を向けた。
じつに沈痛な面持ちだった。
だが、リョウはそれを「必要ねぇ」切り捨てる。
代わりにポーチからあるものを取り出した。
「安心しなァ。あとでこれを使ってやるからよォ」
それは緑の液体が入った試験管。
容器こそ異なるが、おそらくはゲーム時代に何度もお世話になった回復薬だ。
けど、たしかアレって……。
「それは、まさかポーション!? なぜそんな高価なものを!?」
「あァン? あいかわらず、いつの時代の話してんだか。今じゃありふれた日用品だぜェ? それに、コイツはもともとコレに使う予定だった分だしな」
「……は?」
「テメェは思わなかったのかァ? オレたちがどうしてこんな風に、平然と商品を傷つけるようなマネを……価値を下げるようなことをしてるのか、ってよォ」
えっ。奴隷商人の役得、というだけじゃなかったのか!?
戦争で兵士への報酬として略奪や凌辱が許されるようなものかと思っていた。
しかし、なるほど。
ポーションがあるなら話はべつだ。
HPさえ残っていれば、好きに嬲ることができる。
もしかしたら処女膜すらも……?
「わかったら、さっさとそれを着けられなァ」
「……あぁ」
アーサルトは頷いた。
そして、『ガチャリ』と彼の手首に、破魔の拘束具が嵌められた。
「これで満足か? 早くエレナの傷を治してくれ。約束どおり、彼女を解放してくれ」
「あァ? そうだなァ。それじゃァさっさと……」
「――”2人とも”奴隷に堕としちまうとするかァ」
「……は? なにを言ってるんだお前は?」
呆然と、アーサルトが声を漏らした。
「なにをもなにも、そのままの意味だろォが?」
「お前は、僕と約束したじゃないか!? 交換条件だと、言ったじゃないか!?」
「ヌルすぎだろ、バカかテメェ? オレたちゃァ奴隷商人だぜ? なんでモノとの約束なんざ、守らなくちゃいけねェんだよ」
リョウは、もはや興味を失ったとばかりにアーサルトから視線を外す。
立ち上がって、ほかの奴隷商人たちへ声をかける。
「おォい、オメェらァ~。今からコレを奴隷に堕とすから、手伝ェやァ」
リョウがエレナを足蹴にするようにして、指し示す。
完全にモノ扱いだった。
「ま、待ってくれ! お願いだ! 待って……!」
アーサルトは悲鳴のような声を上げ、1本ずつしかない手足でもがく。
だが、あまりにも手遅れだった。
「ああ、ワシが手伝おう」
「おれも手伝いまーす」
「あ、えと、じゃあ自分もやるッス」
陵辱を終え、手が空いていた者たちが立ち上がる。
総勢16人もの奴隷商人がエレナを取り囲んだ。
彼らはそれぞれに手を伸ばし、エレナの身体をべたべたと触りはじめた。
胸、肩、へそ、脇腹、足の裏に膝の裏、指先、眼球、のどの奥や鼻の奥、
とくに人気が高いのはグチャグチャに崩れた性器まわりだった。
はたから見れば、まるで輪姦しているかのような光景。
周囲のエルフたちは動きを止めてそれを見ていた。
止めに入ろうともしない。いや、できなくなっているのだろう。
「発動――」
リョウが号令をかけた。
それに合わせて奴隷商人たちは一斉に唱えた。
そして、ボクは驚愕することになる。
その瞬間、真の意味で世界が変わることとなる。
なぜなら、彼らの口から発せられた言葉は……。
「「「――マジック<テイム>!」」」
テイマー職、固有のマジックだったのだから。
ボクが何千、何万と唱えてきた、もっとも親しみ深いマジックだったのだから。
次の瞬間、目が眩むほどの光が、エレナを中心に発生した。
奴隷商人たちの手から放たれたエフェクトが、何重にもなって彼女を取り囲む。
ボクはすべてを理解した。
つまり……。
(――テイマー職は奴隷商だった!?)
いったい、なにが起こっている?
ゲーム時代、<テイム>の対象は魔物だけだった。
しかし現に今、<テイム>はエルフに対して発動している。
ということはつまり、まさか……。
――現実になったこの世界では<テイム>は人族にも通用するのか?
ボクの中で常識が崩れていく。
そして、新たな世界が幕を開ける――。
彼女の父への愛は憎しみへと転じていた。
……いや、ちがう。
そうじゃない。
エリィが睨みつけているのはアーサルトではなかった。
視線の先に居たのはエレナだ。
「……」
エリィはむしろ無表情に近い顔をしている。
しかし、視線だけは異様なまでに煌々と強い憎悪を宿していた。
今にも一線を越えてしまいそうな、そんな危うい雰囲気。
奇しくもそれは、エレナがレイプされているのを目撃したアーサルトと瓜ふたつであった。
「ったく白けちまったなァ。で、最初の話はなんだったっけか? もう忘れかけちまってらァ」
「……僕がエレナの代わりに奴隷に堕ちる。だから、彼女を解放してくれ。英雄であるこの身体ならば、釣り合うはずだ」
「あ~、そォだったそォだった。まァ、いいぜ? 商人にとしちゃァ、利益が高いほうを選ぶことに否やはねェ。特別だぜ? ……オイ、『破魔の拘束具』を持って来い!」
「らじゃーっす」
奴隷商人のひとりが返事をして、木箱の中へと手を突っ込む。
ジャラジャラと音を立てて取り出したのは、石でできた手錠だった。
「片腕片足だろうと装着してもらう。あの規模の魔法をポンポン放たれちゃァ、かなわねぇからな」
「わかっている。だが、お願いだ。先にエレナに<ヒール>を使わせてくれ」
アーサルトがちらりと、エレナのぐちゃぐちゃになった性器をへと視線を向けた。
じつに沈痛な面持ちだった。
だが、リョウはそれを「必要ねぇ」切り捨てる。
代わりにポーチからあるものを取り出した。
「安心しなァ。あとでこれを使ってやるからよォ」
それは緑の液体が入った試験管。
容器こそ異なるが、おそらくはゲーム時代に何度もお世話になった回復薬だ。
けど、たしかアレって……。
「それは、まさかポーション!? なぜそんな高価なものを!?」
「あァン? あいかわらず、いつの時代の話してんだか。今じゃありふれた日用品だぜェ? それに、コイツはもともとコレに使う予定だった分だしな」
「……は?」
「テメェは思わなかったのかァ? オレたちがどうしてこんな風に、平然と商品を傷つけるようなマネを……価値を下げるようなことをしてるのか、ってよォ」
えっ。奴隷商人の役得、というだけじゃなかったのか!?
戦争で兵士への報酬として略奪や凌辱が許されるようなものかと思っていた。
しかし、なるほど。
ポーションがあるなら話はべつだ。
HPさえ残っていれば、好きに嬲ることができる。
もしかしたら処女膜すらも……?
「わかったら、さっさとそれを着けられなァ」
「……あぁ」
アーサルトは頷いた。
そして、『ガチャリ』と彼の手首に、破魔の拘束具が嵌められた。
「これで満足か? 早くエレナの傷を治してくれ。約束どおり、彼女を解放してくれ」
「あァ? そうだなァ。それじゃァさっさと……」
「――”2人とも”奴隷に堕としちまうとするかァ」
「……は? なにを言ってるんだお前は?」
呆然と、アーサルトが声を漏らした。
「なにをもなにも、そのままの意味だろォが?」
「お前は、僕と約束したじゃないか!? 交換条件だと、言ったじゃないか!?」
「ヌルすぎだろ、バカかテメェ? オレたちゃァ奴隷商人だぜ? なんでモノとの約束なんざ、守らなくちゃいけねェんだよ」
リョウは、もはや興味を失ったとばかりにアーサルトから視線を外す。
立ち上がって、ほかの奴隷商人たちへ声をかける。
「おォい、オメェらァ~。今からコレを奴隷に堕とすから、手伝ェやァ」
リョウがエレナを足蹴にするようにして、指し示す。
完全にモノ扱いだった。
「ま、待ってくれ! お願いだ! 待って……!」
アーサルトは悲鳴のような声を上げ、1本ずつしかない手足でもがく。
だが、あまりにも手遅れだった。
「ああ、ワシが手伝おう」
「おれも手伝いまーす」
「あ、えと、じゃあ自分もやるッス」
陵辱を終え、手が空いていた者たちが立ち上がる。
総勢16人もの奴隷商人がエレナを取り囲んだ。
彼らはそれぞれに手を伸ばし、エレナの身体をべたべたと触りはじめた。
胸、肩、へそ、脇腹、足の裏に膝の裏、指先、眼球、のどの奥や鼻の奥、
とくに人気が高いのはグチャグチャに崩れた性器まわりだった。
はたから見れば、まるで輪姦しているかのような光景。
周囲のエルフたちは動きを止めてそれを見ていた。
止めに入ろうともしない。いや、できなくなっているのだろう。
「発動――」
リョウが号令をかけた。
それに合わせて奴隷商人たちは一斉に唱えた。
そして、ボクは驚愕することになる。
その瞬間、真の意味で世界が変わることとなる。
なぜなら、彼らの口から発せられた言葉は……。
「「「――マジック<テイム>!」」」
テイマー職、固有のマジックだったのだから。
ボクが何千、何万と唱えてきた、もっとも親しみ深いマジックだったのだから。
次の瞬間、目が眩むほどの光が、エレナを中心に発生した。
奴隷商人たちの手から放たれたエフェクトが、何重にもなって彼女を取り囲む。
ボクはすべてを理解した。
つまり……。
(――テイマー職は奴隷商だった!?)
いったい、なにが起こっている?
ゲーム時代、<テイム>の対象は魔物だけだった。
しかし現に今、<テイム>はエルフに対して発動している。
ということはつまり、まさか……。
――現実になったこの世界では<テイム>は人族にも通用するのか?
ボクの中で常識が崩れていく。
そして、新たな世界が幕を開ける――。
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