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第九回 決意、覚悟、夜を行く。
九の一(浴室情事の記憶、女王の指責め、つがい ★R-18描写あり)
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/一
発情期を終えて数日後のこと。
浴場に招かれた宋江は、ぼんやりと湯に浸かっていた。
(これほど広い浴場なんて、生まれて初めて見る。私は世間知らずだが、ここまでのものは珍しいものだろう)
滄州に住む富豪・柴進宅だからこその豪華さに、目が眩む。
それほど柴進が分限者で高貴、常に清潔を心掛けているのだと思い知らされる浴場だった。
風呂だから仕方ないとはいえ、生まれたままの姿で人を待つのは、こそばゆい。
しかもただの全裸ではなく、首には特注の首輪を着けたまま。
恥ずかしさのあまり、そわそわと落ち着かない。かといって、ここから逃げることなど、できなかった。
「宋江殿……いえ、宋江様。遅くなって申し訳ございませんわ」
茶化した口調のまま、屋敷の主人である柴進が現れる。
既に身に着ける物は何も無く、美しい白い肌、豊満な双胸、逞しい男根、全て晒した状態であった。
「さ、柴進様、お戯れが過ぎます。武松の冗談に乗らないでください……」
「ふふふ、良いじゃないですか、宋江様。貴方は私より素敵な御方なのでしょう?」
いくら訴えても、柴進は軽口をやめない。
先日、宋江に懐いた武松が高貴なる柴進に対して暴言を吐いた。
武松の純粋な心がぶつけた「どうして宋江を敬わないのか」という悪たれを、柴進はとても気に入っている。だから持て囃す言動を、やめない。
宋江が青くなったり慌てたり怯えたりする姿を、存分に楽しんでいるのだった。
全てを晒している柴進は、その柔肌を身を小さくする宋江に重ねる。
宋江の隣に腰を下ろし、冬の体をお湯で温めながら宋江の膝を撫でた。
「でっ、ですからっ……柴進様、お戯れが過ぎます……」
「まだ恥ずかしがるの? お風呂で洗ってあげるの、もう何回目です?」
「そんな、柴進様にお手間を取らせてしまうなんて、私には身に余る光栄……」
「貴方の懇願に免じて、性行は我慢してるのです。これぐらいはさせてちょうだい」
バシャリとお湯の音を立てながら柴進は宋江に縋り寄ると、顎を掬い、唇を奪う。
「ぅむぅっ……んんん、んちゅ、さ、柴進様……」
長い指が頬を伝い、宋江の福耳を捉えた。
「接吻だけでそんな可愛い声を出されるなんて。いっぱい、してあげます」
耳朶を引っ張るようにして頭を固定し、口内陵辱から逃さない。
端整で利発な面持ちに目を奪われる上、大きな胸を押しつけられ、宋江の男心が嫌でも高鳴った。
それでも宋江の中に生じるのは、不敬という事実。
柴進は、後周の皇帝の血を引くやんごとない高貴な天人である。浴室で肌を重ねるなど畏れ多い。
それは宋江が連日申し出ていることなのだが、「なら、姦淫はしません」と言うだけで、性戯は毎日のように続いていた。
「お風呂は気持ち良いでしょう? 冬は体の芯まで温まるのが一番です」
「は、い……ぁ、んぁっ! ぁぁっ、そんなところ、あああっ」
唇を奪い、掌全体の愛撫を開始した途端、柴進は湯船に浸かる宋江の股間を指で嬲り始めた。
湯の中で指が宋江の陰茎を撫でる。
体をくねらせ、虐げようとする指を追い出そうとしたが、押し退けることはできずにいた。
「ぁ……やぁっ、柴進様ぁ……」
相手が自分よりも立場が上というだけでない。
肉棒を持っているとはいえ女性の姿であり、楽しそうに遊んでいる彼女に乱暴する気など、宋江は持ち得なかった。
「さあ、脚を開いて。もっと洗ってさしあげますから」
何より上位者に強く命じられては、快楽に弱い宋江は従う以外の選択肢が無い。
「脚を開いて。早く」
身を丸くして体を閉じていた宋江は、たとえ湯船の中でなくても肌を真っ赤に染めながら、ぎゅっと目を瞑って両脚を開ける。
浴槽の中で晒されていた陰茎へ、柴進の指が再び襲った。
細く傷一つ無い指が、早くも腫れ上がる宋江自身を掠めていく。
一瞬でとろけるほどの快感を与えられ、ゾクゾクと背を仰け反らせた。
「んぅ……ん……ぁ……ふぅ……」
脚を開けと命じられた宋江ができるせめてもの抵抗は、口元を抑えるぐらいだ。
主お気に入りの浴室は、従者はもちろん、柴一族も許可なく入ってはこない。
相当な大声を出さない限り、誰にも声が聞かれる心配は無い。
とはいえ、縦横無尽に吠えたてることは、宋江自身が許さなかった。
「んぅ……んんん……ぁんんん……」
複数の指で性器を刺激され、宋江の下半身はビクビクと快楽によって揺れる。
しかし動きはぎこちなく、明らかに柴進が茶化してからかう。
微弱な指責めでは、簡単に絶頂へ至れない。
湯という緩やかな障壁もあり、宋江は徐々に快感を高められながら、肝心な波を受けられないもどかしさを味わうことになった。
「んんんん……ぅ……ぁ、そこ……そこぉ、ぁあ……」
だからか、自然と甘えるような口ぶりが出てしまう。
顔は紅潮し、目は潤んでいた。
命じられて許していた脚は次第に指を押しつけるように自ら開き、もっとスリスリと性器を嬲ってほしいと、鳴いていた。
「お可愛いですね、宋江様。わたくしを慕って甘えてきたお嬢さん達のよう」
だが柴進が声を掛けた瞬間、宋江の目が覚める。
快楽に負けて陰核責めを強請っていたことに気付いた宋江は、口を押さえていた両手をバッと柴進の腕へと運んだ。
もう一度、やめてほしいと懇願する。
「もうっ。すぐ戻っちゃうんだから。……やっぱりわたくしも発情期中の乱れる宋江様を食べたかったですっ。武松に取られて、悔しいっ」
「ぶ、武松は悪くないのです。言わないであげてください……」
「わたくしはダメで、武松はお布団に入れていいなんて、不公平ではないですか。あんな大きな虎、毛繕いするのも大変でしょう? わたくしだったら毎晩……」
「も、もう武松とはしておりませんッ。その……そ、添い寝だけです。発情期中は、えっと、私の我儘を叶えてくれましたが、それ以後は、とても彼は真面目で」
「本当ですか。してないのですか。あの男、そんなに我慢強いのですか。わたくしは宋江様にいっぱい触れたいというのに」
「あぅっ」
口を尖らせる柴進が、宋江の伸ばしてきた腕を取り、自分の股間へと導く。
腕が、湯に濡れ光る柴進自身に、ぶつかった。
少し成長したモノに、宋江はさらにカアと頬を赤らませる。
押し付けられたまま、ゆっくり指を撫で下ろした。
「本当なら、貴方の膣内をいっぱい満たしたいところなのです。でも、宋江様はとても誠実で清楚な御方。貴方の忠言を無碍にせず、その顔を立ててあげているのです」
「あ、ありがとうございます……」
「なので触るだけです。では、わたくしの気が変わらないうちに、今度は貴方が」
柴進は浴槽を立った。成長しつつあるモノを、宋江の顔面に晒す。
なだらかな肩や、肉付きの良い腰、顔ほど豊かな両乳房があるにも関わらず、股間は男性顔負けの性器がそびえ立っていた。
これが陰陽どちらも備わり、人を超越した天神と謳われた形象かと、宋江は何度拝見しても言葉を失う。
そして、もう何度経験しても未だ慣れぬ奉仕をすべく、深々と頭を下げた。
「……宋江様。首輪、ずっと着けてくださっているのね」
長く頭を伏して呼吸を整えていた。
その沈黙を破るかのように、何気なく柴進が宋江の首元に手を置く。
「この首輪は……柴進様から頂いた物ですから……」
発情期が始まる三日ほど前、武松に会う前に柴進から送られた首輪を、宋江は出来る限り身に着けていた。
本当なら入浴時は外したかったが、あくまで今の時間は柴進との奉迎であり、だからこそ彼女からの贈物を放り出すのは憚られていた。
「貴方は、番を作る気は無いの?」
「……つがい、ですか?」
伏せていた頭を上げ、宋江は首を傾げる。
知らない言葉であった。
「番というのは、アルファとオメガの契約のようなもので……番を作ったオメガは、以後発情香を発さなくなると言われています」
「そ、そんなことがあるのですかっ?」
宋江は、自身の体を多く知らない。知る機会など無かった。
そもそも第三の種を知る者の方が、この宋国には、圧倒的に少ない。
孔太公のような奇病を知る医師は非常に少なく、道士・公孫勝のように抑制剤を熟知している者も、極めて稀である。
柴進も多くを学べる高貴な生まれだからこそ、知識が得ることができただけ。
時は北宋代(西暦1100年代頃)。
儒学を基礎とする知識人が力をつけ、物書きが庶民にも普及。
商業が発展し、大通りには何千という料理店が立ち並び、民が国を闊歩できるようになった文化の春でも、多くの民は『男女以外の性』に区分があるなど、知らない。
また、稀有な確率で宋江のような生物が産まれることも、知られていなかった。
「どのようなことをすれば、その契約は、できるのですか」
「アルファが、オメガのうなじや喉元……首を噛むのです。発情期のとき、性行為で達している間に。ただ、相性があるようで、誰彼構わずではないそうです」
発情期のとき。
達している間に。うなじを噛む。
ふと――李逵に首へ舌を這われた瞬間、途轍もない衝撃が走った記憶を思い出す。
興奮や嫌悪でなく、言葉にならない衝動に襲われたため、忘れられないでいた。
「契約行為は、体の構造を変えるものです。易々としてはならないものだと聞いております。やり方を間違えると、恐ろしい反動があるそうですし」
「そう、なのですか……良いことではないのですか……」
「その首輪は、元々はオメガの変貌を回避するため……体を労わるための物でして。貴方のようなオメガがいらっしゃったら渡そうと思っていた物なの。お体の為にも、これからも着けていただけたら幸い。とっても良い細工師の逸品ですしね」
「あ……ありがとうございます。大切にします」
「まあ、お散歩遊戯には首輪と紐は必要ですしね。ピッタリですよ、宋江様」
首輪に触れていた柴進の手が、再び宋江の顎を攫う。
そのまま顎を腰へと、さぁ、と寄せる。
奉仕の時間が、その日も始まった。
発情期を終えて数日後のこと。
浴場に招かれた宋江は、ぼんやりと湯に浸かっていた。
(これほど広い浴場なんて、生まれて初めて見る。私は世間知らずだが、ここまでのものは珍しいものだろう)
滄州に住む富豪・柴進宅だからこその豪華さに、目が眩む。
それほど柴進が分限者で高貴、常に清潔を心掛けているのだと思い知らされる浴場だった。
風呂だから仕方ないとはいえ、生まれたままの姿で人を待つのは、こそばゆい。
しかもただの全裸ではなく、首には特注の首輪を着けたまま。
恥ずかしさのあまり、そわそわと落ち着かない。かといって、ここから逃げることなど、できなかった。
「宋江殿……いえ、宋江様。遅くなって申し訳ございませんわ」
茶化した口調のまま、屋敷の主人である柴進が現れる。
既に身に着ける物は何も無く、美しい白い肌、豊満な双胸、逞しい男根、全て晒した状態であった。
「さ、柴進様、お戯れが過ぎます。武松の冗談に乗らないでください……」
「ふふふ、良いじゃないですか、宋江様。貴方は私より素敵な御方なのでしょう?」
いくら訴えても、柴進は軽口をやめない。
先日、宋江に懐いた武松が高貴なる柴進に対して暴言を吐いた。
武松の純粋な心がぶつけた「どうして宋江を敬わないのか」という悪たれを、柴進はとても気に入っている。だから持て囃す言動を、やめない。
宋江が青くなったり慌てたり怯えたりする姿を、存分に楽しんでいるのだった。
全てを晒している柴進は、その柔肌を身を小さくする宋江に重ねる。
宋江の隣に腰を下ろし、冬の体をお湯で温めながら宋江の膝を撫でた。
「でっ、ですからっ……柴進様、お戯れが過ぎます……」
「まだ恥ずかしがるの? お風呂で洗ってあげるの、もう何回目です?」
「そんな、柴進様にお手間を取らせてしまうなんて、私には身に余る光栄……」
「貴方の懇願に免じて、性行は我慢してるのです。これぐらいはさせてちょうだい」
バシャリとお湯の音を立てながら柴進は宋江に縋り寄ると、顎を掬い、唇を奪う。
「ぅむぅっ……んんん、んちゅ、さ、柴進様……」
長い指が頬を伝い、宋江の福耳を捉えた。
「接吻だけでそんな可愛い声を出されるなんて。いっぱい、してあげます」
耳朶を引っ張るようにして頭を固定し、口内陵辱から逃さない。
端整で利発な面持ちに目を奪われる上、大きな胸を押しつけられ、宋江の男心が嫌でも高鳴った。
それでも宋江の中に生じるのは、不敬という事実。
柴進は、後周の皇帝の血を引くやんごとない高貴な天人である。浴室で肌を重ねるなど畏れ多い。
それは宋江が連日申し出ていることなのだが、「なら、姦淫はしません」と言うだけで、性戯は毎日のように続いていた。
「お風呂は気持ち良いでしょう? 冬は体の芯まで温まるのが一番です」
「は、い……ぁ、んぁっ! ぁぁっ、そんなところ、あああっ」
唇を奪い、掌全体の愛撫を開始した途端、柴進は湯船に浸かる宋江の股間を指で嬲り始めた。
湯の中で指が宋江の陰茎を撫でる。
体をくねらせ、虐げようとする指を追い出そうとしたが、押し退けることはできずにいた。
「ぁ……やぁっ、柴進様ぁ……」
相手が自分よりも立場が上というだけでない。
肉棒を持っているとはいえ女性の姿であり、楽しそうに遊んでいる彼女に乱暴する気など、宋江は持ち得なかった。
「さあ、脚を開いて。もっと洗ってさしあげますから」
何より上位者に強く命じられては、快楽に弱い宋江は従う以外の選択肢が無い。
「脚を開いて。早く」
身を丸くして体を閉じていた宋江は、たとえ湯船の中でなくても肌を真っ赤に染めながら、ぎゅっと目を瞑って両脚を開ける。
浴槽の中で晒されていた陰茎へ、柴進の指が再び襲った。
細く傷一つ無い指が、早くも腫れ上がる宋江自身を掠めていく。
一瞬でとろけるほどの快感を与えられ、ゾクゾクと背を仰け反らせた。
「んぅ……ん……ぁ……ふぅ……」
脚を開けと命じられた宋江ができるせめてもの抵抗は、口元を抑えるぐらいだ。
主お気に入りの浴室は、従者はもちろん、柴一族も許可なく入ってはこない。
相当な大声を出さない限り、誰にも声が聞かれる心配は無い。
とはいえ、縦横無尽に吠えたてることは、宋江自身が許さなかった。
「んぅ……んんん……ぁんんん……」
複数の指で性器を刺激され、宋江の下半身はビクビクと快楽によって揺れる。
しかし動きはぎこちなく、明らかに柴進が茶化してからかう。
微弱な指責めでは、簡単に絶頂へ至れない。
湯という緩やかな障壁もあり、宋江は徐々に快感を高められながら、肝心な波を受けられないもどかしさを味わうことになった。
「んんんん……ぅ……ぁ、そこ……そこぉ、ぁあ……」
だからか、自然と甘えるような口ぶりが出てしまう。
顔は紅潮し、目は潤んでいた。
命じられて許していた脚は次第に指を押しつけるように自ら開き、もっとスリスリと性器を嬲ってほしいと、鳴いていた。
「お可愛いですね、宋江様。わたくしを慕って甘えてきたお嬢さん達のよう」
だが柴進が声を掛けた瞬間、宋江の目が覚める。
快楽に負けて陰核責めを強請っていたことに気付いた宋江は、口を押さえていた両手をバッと柴進の腕へと運んだ。
もう一度、やめてほしいと懇願する。
「もうっ。すぐ戻っちゃうんだから。……やっぱりわたくしも発情期中の乱れる宋江様を食べたかったですっ。武松に取られて、悔しいっ」
「ぶ、武松は悪くないのです。言わないであげてください……」
「わたくしはダメで、武松はお布団に入れていいなんて、不公平ではないですか。あんな大きな虎、毛繕いするのも大変でしょう? わたくしだったら毎晩……」
「も、もう武松とはしておりませんッ。その……そ、添い寝だけです。発情期中は、えっと、私の我儘を叶えてくれましたが、それ以後は、とても彼は真面目で」
「本当ですか。してないのですか。あの男、そんなに我慢強いのですか。わたくしは宋江様にいっぱい触れたいというのに」
「あぅっ」
口を尖らせる柴進が、宋江の伸ばしてきた腕を取り、自分の股間へと導く。
腕が、湯に濡れ光る柴進自身に、ぶつかった。
少し成長したモノに、宋江はさらにカアと頬を赤らませる。
押し付けられたまま、ゆっくり指を撫で下ろした。
「本当なら、貴方の膣内をいっぱい満たしたいところなのです。でも、宋江様はとても誠実で清楚な御方。貴方の忠言を無碍にせず、その顔を立ててあげているのです」
「あ、ありがとうございます……」
「なので触るだけです。では、わたくしの気が変わらないうちに、今度は貴方が」
柴進は浴槽を立った。成長しつつあるモノを、宋江の顔面に晒す。
なだらかな肩や、肉付きの良い腰、顔ほど豊かな両乳房があるにも関わらず、股間は男性顔負けの性器がそびえ立っていた。
これが陰陽どちらも備わり、人を超越した天神と謳われた形象かと、宋江は何度拝見しても言葉を失う。
そして、もう何度経験しても未だ慣れぬ奉仕をすべく、深々と頭を下げた。
「……宋江様。首輪、ずっと着けてくださっているのね」
長く頭を伏して呼吸を整えていた。
その沈黙を破るかのように、何気なく柴進が宋江の首元に手を置く。
「この首輪は……柴進様から頂いた物ですから……」
発情期が始まる三日ほど前、武松に会う前に柴進から送られた首輪を、宋江は出来る限り身に着けていた。
本当なら入浴時は外したかったが、あくまで今の時間は柴進との奉迎であり、だからこそ彼女からの贈物を放り出すのは憚られていた。
「貴方は、番を作る気は無いの?」
「……つがい、ですか?」
伏せていた頭を上げ、宋江は首を傾げる。
知らない言葉であった。
「番というのは、アルファとオメガの契約のようなもので……番を作ったオメガは、以後発情香を発さなくなると言われています」
「そ、そんなことがあるのですかっ?」
宋江は、自身の体を多く知らない。知る機会など無かった。
そもそも第三の種を知る者の方が、この宋国には、圧倒的に少ない。
孔太公のような奇病を知る医師は非常に少なく、道士・公孫勝のように抑制剤を熟知している者も、極めて稀である。
柴進も多くを学べる高貴な生まれだからこそ、知識が得ることができただけ。
時は北宋代(西暦1100年代頃)。
儒学を基礎とする知識人が力をつけ、物書きが庶民にも普及。
商業が発展し、大通りには何千という料理店が立ち並び、民が国を闊歩できるようになった文化の春でも、多くの民は『男女以外の性』に区分があるなど、知らない。
また、稀有な確率で宋江のような生物が産まれることも、知られていなかった。
「どのようなことをすれば、その契約は、できるのですか」
「アルファが、オメガのうなじや喉元……首を噛むのです。発情期のとき、性行為で達している間に。ただ、相性があるようで、誰彼構わずではないそうです」
発情期のとき。
達している間に。うなじを噛む。
ふと――李逵に首へ舌を這われた瞬間、途轍もない衝撃が走った記憶を思い出す。
興奮や嫌悪でなく、言葉にならない衝動に襲われたため、忘れられないでいた。
「契約行為は、体の構造を変えるものです。易々としてはならないものだと聞いております。やり方を間違えると、恐ろしい反動があるそうですし」
「そう、なのですか……良いことではないのですか……」
「その首輪は、元々はオメガの変貌を回避するため……体を労わるための物でして。貴方のようなオメガがいらっしゃったら渡そうと思っていた物なの。お体の為にも、これからも着けていただけたら幸い。とっても良い細工師の逸品ですしね」
「あ……ありがとうございます。大切にします」
「まあ、お散歩遊戯には首輪と紐は必要ですしね。ピッタリですよ、宋江様」
首輪に触れていた柴進の手が、再び宋江の顎を攫う。
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