サファヴィア秘話 ―妖花満開―

文月 沙織

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 さもありなんとディアニスも思う。
 それでもアイジャルはそれなりに政務にもつとめたらしいが、流行病と凶作がつづき、その病でラオシンが亡くなってしまうと、すべてにやる気をなくし、室にこもりきって臣下たちを遠ざけ、その後は酒に溺れたという。流行病は、おさまったと思ってもまたぶり返し、この十年、神から見放されたこの国の民を苦しめつづけ、人心は、とうに王から離れてしまった。
 そして半年まえ、一度も父王からかえりみられることのなかった王太子が謀反を起こしたのだ。正確に言うと、彼の伯父となる貴族が中心となって乱を起こしたのだ。
 王宮は血で染まり、三日三晩あちこちで悲鳴が聞こえたと伝え聞く。
 王太子側は、最初は王に退位をもとめ、神殿で神官となることをすすめたが、アイジャル王は聞き入れず「玉座が欲しければ、余を殺せ」と叫んだという。
 王はその場で殺され、王付きの従者もすべてこの乱で殺された。そのなかには長年王につかえた宮廷舞踏師もいれば、宮廷ではめずらしい肌の色をした侍女もいた。宦官頭は処刑され、宮廷で一、二を争うほどの若き美貌の宦官は、当初は反乱兵の目を逃れて逃げたと思われていたが、二日後、宮殿の中庭にアイジャル王の命によって作られたラオシン=シャーディー王子の墓前で毒を飲んで果てていたのが見つかった。他にも王寄りの側近、臣下たちの半分以上は殺され、宮廷では一大改革、刷新がおこなわれた。
 サファヴィア一と言われた勇将サルドバは、謀反が起こったとき、幸か不幸か、流行病から逃れるために国境近くに避難させていた妻子をおとずれていたので、難をのがれた。彼が王都にいれば、様相は変わっていたかもしれないが、すでに遅きに失していた。
(将軍は、アイジャル王亡き今は、戦う意味がないと言って、将軍職とすべての財産、所領を王太子に返上する旨をつたえたあと、数人の部下をつれて妻子とともに逃亡したらしいよ。前王にたいして不忠だと言う人もいるが、まぁ、その方がいいよな。王が生きかえるわけもないし、将軍が王太子に反抗すれば、ますます都は混乱する)
 詩人の言葉にディアニスも頷くしかない。
 新王となる王太子と戦えば、ますます騒擾そうじょうを招き、収集がつかなくなる。新王に服従せず国を捨てたというのが、サルドバのせめてもの誠実さなのだろう。前王に優遇されながらも、彼が殺されたあと、さっさと王太子に鞍替くらがえした貴顕高官きけんこうかんは多い。
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