サファヴィア秘話 ―妖花満開―

文月 沙織

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 ディアニスは自分で自分が信じられなかった。
 だが、想いは真実だった。
 ラオシンを木馬から引きずり下ろし、王の手でもなく、道具ででもなく、ディアニス自身の手と熱い肉体で悦ばせ、彼の切ない願望をかなえてやりたい。
 そんな欲望が顔と目に出ていたのか。
 ラオシンが首を振った刹那、一瞬だけ合った目に、激しい羞恥の情感がきらめいた。
(気づかれた……?)
 ディアニス自身も消え入りたいほどの羞恥を感じた。
 ラオシンは目を逸らすと、また顔をうつむけ、せまりくる屈辱の瞬間に怯えて、身を震わせる。
「おお、遂きそうじゃぞ。どうじゃ、遂くか、ラオ?」
「うっ……、うう」
「もうよかろう。あとは、自分で遂くがよい」
 嘲笑を浮かべて、王は一歩退いた。
「はっ……、ああ!」
 ラオシンは狂おしげに上半身を揺らし、悔しげに唇を噛み、切なげに眉を寄せる。
 その様子は、淫魔のように妖しく、女神のように美しい。ディアニスは圧倒された。
「ううっ……! ううっ……!」
 もう、どうにもならない所まで行ってしまったようだ。ラオシンは覚悟を決めたように、もう一度唇を噛みしめると、下腹に力を入れるような動作をした。
「ああ……、ディアニス……」
 ラオシンの唇が己の名を刻むのを見、ディアニスの方が緊張した。
「み、見ないでくれ……」
 おまえにだけは、見られなくない、というラオシンの心の声が聞こえた気がして、ディアニスは胸がつぶれる想いを噛みしめた。
 自分がここにこうして立っていることが、どれだけ誇りたかいラオシンを傷つけ、いたたまれぬ想いにしているか。想像すると、自分の方こそ舌を噛み切ってでも死ぬべきだと思う。
 だが……、駄目なのだ。
 ディアニスの両目から無念の涙がこぼれる。
 死んでしまいたいが、死ねない。見てはいけないはずなのに、目を逸らすことができない。
 ラオシンが、こんな無残な状況でも、死ぬこともできず生きて恥を晒していることを責める資格はディアニスにはない。
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