サファヴィア秘話 ―妖花満開―

文月 沙織

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 美しい少年と、彼よりは年上の娘だった。二人とも宮廷のお仕着せの衣をまとっているところからして、小姓と侍女のようだ。少年の方は、動きや雰囲気からして宦官ではないかとディアニスは見当をつけた。
 あらかじめ命じられていたらしく、二人は申し合わせたようにラオシンの左右に立つと、それぞれ手にしていたものを捧げる。
 それは、真紅の天鵞絨ビロードの上にきらめく金の輪だった。
 数秒、いぶかしんで突っ立っているディアニスを尻目に、二人はゆったりと動きだす。
「は……あ!」
 カチャリ、と音がして、金の輪がラオシンの脛に嵌まる。
(あっ……)
 なすすべなく佇立していたディアニスは、彼らと王の意図がわかってますます赤面した。
 黄金の輪は重量感があり、それが脚に着けられることによって、重みが加わり……、圧迫感が増し、ラオシンを切ながらせることになるのだということが、当の彼の表情から知れてしまう。
「はっ……ああっ……」
 ずっしり――とくるのだろう。ディアニスまで激しく狼狽うろたえた。
「ううっ……あ、ああっ……! も、もう……!」
 一人で馬上で身もだえするラオシンの姿は絶景だった。
 支柱に戒められている手がふるえ、指が小刻みに震えているのが、ディアニスにも見えた。
 ディアニスは必死に足を動かそうとした。
 できることなら、ラオシンを助けたい。
 だが、アイジャル王の御前でそれは叶わない。ならば、一刻も早くこの場から逃げ出したい。この場にいてはいけないのだ。これ以上、ラオシンのこんな姿を見てはいけない。自分がいることでラオシンはいっそう傷つく。
 だが、根が着いてしまったように足が動かない。
「くぅ……! ああっ!」
 ラオシンのやるせない吐息が感じられ、ディアニスまで震えてきた。
「おお、ラオ、遂けそうか?」
 ラオシンは首を振り、首に毛先を散らし、全身を汗に濡らして、呻いた。
「ああ、アイジャル……も、もう許してくれ!」
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