サファヴィア秘話 ―妖花満開―

文月 沙織

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破滅の音色 一

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「ああ……!」
 無駄だとわかっていても、手足をどうにか動かそうと努力してみたが、すべては徒労となりむなしい疲労となってラオシンにかえってくる。
 そうこうしている間にも、幕向こうの人の気配と存在感は強くなってラオシンに迫ってくる。
(ど、どうすれば……、どうすればいいのだ)
 焦燥と恐怖にラオシンは涙ぐみながら、無理だと思っていても、また儚い努力をしていた。
 それは、ラオシンにとって、かえって危険なこととなった。
 嵌められたままの器具が、ラオシンの繊細な身体にもどかしい感触をもたらすのだ。
「うう……」
 拭われることのない媚薬が、熱くなってきた体内で、また効果を発揮しはじめた。
 さらなる反応を予期して、ラオシンは絶望的になった。
(こ、こんな……、こんなことが……)
 信じられないことに、このあまりにも異常な状況で、またも感じはじめているのだ。
 ほぼ全裸に剝かれ、おぞましい木馬に乗せられ、秘部に卑猥な道具をあてがわれ、両手両足の自由を奪われ、しかも、あろうことか幕いちまい向こうには、己をこんな惨憺たる状況に追いこんだ憎い男と、旧知の仲の青年がいるのだ。
(こんな、こんな姿をディアニスに見られたら……)
 付き合いのまったくない人間なら、まだ耐えれたかもしれない。なんといっても、「悦楽の園」でさんざん酷い目に合わされたのだ。慣れることはできないが、あの宴の折りのように、面識のない見知らぬ人間であれば、まだしも救いがあったろう。
 だが、相手は、少年時代の純真な感情のままに、熱く議論を交わした相手である。しかも、彼、ディアニスは生真面目でまっすぐな気性だ。
 それこそ「悦楽の園」に来た男たちのように、いっそジャハンやジャハギルのようにおぞましい欲望に染まった下種であり、軽蔑できる連中であった方が、いくら悔しくとも、まだラオシンは楽だったかもしれない。相手はしょせん、獣。獣に見られたぐらいだと、己を慰められ、最後の自尊心の壁はまもれた。
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