サファヴィア秘話 ―妖花満開―

文月 沙織

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「ああっ、ああっ、もっと、ああ、もっと、そこじゃ、そこ!」
 母王妃……エメリス王妃はそこにいた。
 長椅子に腰かけている今宵の彼女は、寝着である薄手の百衣をまとっているが、その衣の前はひどく乱れている。
 いや、乱れているのは衣だけではない。いつもは高々と結いあげられ金銀宝玉のかんざしでかざられている黒髪も、今までに見たことがないほど乱れて彼女の背で揺れている。つねの気位の高い彼女とは別人のようである。
(母上……)
 アイジャルを驚かせたのは、母の異常な様子よりも、母の前にいる……奇妙な生き物だった。
 刹那せつな、アイジャルは大声を出しそうになった。
 宮殿に、狼か野犬が迷い込んできたのかと、幼い彼は本気でそう思った。獣が母を襲っている、と。
 だが、目が慣れてくると、母の前におおいかぶさるようにしている黒いものが、獣ではなく、人間だと知れた。黒く見えるのは衣の色のせいだ。
 しかしそれは、人と呼ぶことがためらわれるような浅ましい様子を見せていた。
「はぁ……! ああっ、ああああっ!」
 エメリス王妃は、あろうことか、脚を広げ、衣をたくしあげ、おのれの秘部をその黒い生物にあずけるような格好をしている。
(まさか……)
 アイジャルは身体の震えを止められない。
 やや身を起こしたせいで、〝それ〟は、今度は猿のように見える。そこで、やっとアイジャルはその不気味な影が何者かわかった。
 それは宦官長のジャハンであった。
 短躯たんくに醜悪な顔で、宮女や侍女たちからは忌まれているが、機転のきくところがあり、王妃からは気に入られている。
(母上は何故あのように卑しげな者をお側に寄らせるのだろう)
 アイジャルはよくそう思ったものだ。
 気位の高いことでは並ぶ者ない王妃は、どんなはしたのものでも後宮に出入りするものは見目良く血筋家柄のただしい人間に限らせていた。それが、どういうわけでジャハンのように生まれ素性も知れぬ下賤げせんの者を側に置くのか。幼いながらもアイジャルは奇妙に思っていたが、今夜その謎が解けた。
「あっ、あああっ!」
 王妃は白い首筋をのけぞらせて喜びの声をあげた。
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