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閨怨の夜 一
しおりを挟む絶頂をきわめたラオシンが、一瞬、魂を天に飛ばしたとき、乱れきる従兄を抱くアイジャルの双眼は、ここではない別のどこかに向けられていた。
はぁ、ああっ、あああっ……。
廊下で、その声を聞いたとき、アイジャルの幼い心臓は止まりそうになった。
石造りの廊下には、その夜にかぎって王妃につかえる女官や侍女も、衛士の宦官兵のすがたも見当たらない。
(母上……?)
もしや母であるエメリス王妃の身に何か起こ起こったのでは、と案じて、アイジャルは薄絹の帳をめくっていた。
アイジャルは数日前に十二歳になったばかりであった。もう十二歳だというのに、怖い夢におびえて目を覚ました彼は、母をもとめて深夜に後宮の最奥へ忍び込んでしまった。
実際には、母よりも、いつもなら隣室に控えている乳母の姿が見えなかったため、王妃宮にいるのではないかと、彼女をさがしに来ていたのだが。
「はぁっ、ああっ! ああああっ!」
またも、声が聞こえる。まちがいなく母の声である。
アイジャルはそっと、なかの様子をうかかがったが、帳の向こうには、さらにまた薄い緋色の帳があり、その布一枚が、母と子のあいだを隔てていた。
(母上は、御病気なのだろうか?)
最近、母王妃が具合が悪いらしく、よく宮廷侍医――それも宦官である――を呼んでいるということは耳にした。
去勢されて男性の象徴をうしなった宦官をべつとすれば、後宮の最後の秘室とされる王妃の閨に足を踏み入れることができるのは国王である父イブラヒル王だけではあるが、子どもの特権、それも一人息子で嫡子であるという最強の特権でもって、アイジャルは平然と禁をおかして王妃の閨の内へ足を踏みいれた。実際、五歳まではアイジャルは自由にこの室へ出入りしており、五歳を過ぎてからもちょくちょく出入りしていたし、王妃の侍女たちも目をつぶっていた。
病気で苦しんでいるであろう母を驚かさないように、足音をたてないように、そっと、そっと、なまめかしい薄緋色の帳を分けた瞬間、彼はそこに信じられないものを見てしまった。
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