サファヴィア秘話 ―妖花満開―

文月 沙織

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(ああ……、何故、こんな……)
 ラオシンの薄い唇は、かろうじてそんな言葉を吐きだしていた。
 全身を火照ほてらせ、それでいて流す涙の清涼さが、またアイジャルの被虐欲をあおったようだ。
「おまえたち、もっと近くにきて、ラオシン殿下のあられもない姿をよく見せてもらえ」
「ああ!」
 ラオシンたちを取り囲んでいた人の輪がちぢまり、いっそう彼らの視線の針をつよく感じてラオシンは悶える。
「どうじゃ、美しい肌であろう?」
 その問いは、一番近くにいるジャハギルに向けられたようだ。
「はい。本当に殿下の肌はお麗しいわ。玉の肌だわねぇ。羨ましいぐらい」
 つん、とふしくれだった人差し指が、無礼にもラオシンのひきしまった太腿ふとももを突く。
「さ、触るな! み、見るな!」
 ラオシンは言ってから顔を伏せた。
「何故に泣く、ラオ? ラオはこうしてじっくり見られるのが好きじゃと聞いたぞ。下賤げせんのものらに見られながら、玉を出したというではないか」
「うう……」
 蛇紋石サーペンティンの玉石を体内に入れられ、それを見られながら出すことを強要されたときの屈辱があらたに身を焦がす。
「汗みずくになりながら必死ふんばっておったと。そんないじらしいラオを余も見たかったものじゃ」
 そのときの光景がラオシンの頭に浮かび、絶叫してしまう。
「や、やめろ! 言うな!」
 アイジャルは高笑いをした。
 そのアイジャルの笑い声に、女の笑い声がかさなってラオシンの耳に聞こえてくる。それは娼館の女主の声でもあれば、今はもう亡い後宮の女帝の声でもあった。
「うう……」
 新たな涙が頬をつたう。
 ラオシンの流した涙の原因は、肉体への凌辱もさることながら、心への攻撃だろう。
 それは、魂を焼き尽くすような羞恥の知覚である。
 この時代の王侯貴族のつねとして、アイジャルもラオシンも召使に肌を見られることに抵抗は薄かった。王族貴族の世界では、ねやの外にも常にいつ呼ばれても来られるように従者が控えているものであり、夫婦の寝室であっても、薄いとばりいちまい向こうでは侍女や宦官が待機しているものである。
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