サファヴィア秘話 ―妖花満開―

文月 沙織

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 ねっとりと、とろとろと甘美な毒のような濃厚な時間が過ぎていく。
 いつしか辺りは薄暗くなっていたが、誰も蝋燭を灯そうとはしない。
 皆固唾かたずを飲んで、ラオシン=シャーディーという大輪の花が散らされる様を、いや、完全に開花する瞬間を待ち望んでいるのだ。
「わ、私の……う、後ろに入れて!」
 ラオシンは相手から目を逸らして、叫ぶように言った。
「何を、じゃ?」
「うっ……」
 啜り泣きそうになりながらも、どうにもならず、ラオシンは屈辱の言葉を吐き出す努力をする。
「ああっ……! お、おまえのを、わ、私の後ろに入れて!」
 興奮と憎しみもあって、ラオシンは〝おまえ〟という、この国では決して目の前の相手に向けて使ってはならない言葉を、またも使っていた。
 そのことに、当のアイジャル王は少しも怒りを見せず、むしろ感情を爆発させた年上の愛人を面白そうに見下ろしている。
「可愛い、ラオ。本当はもう少し苛めてやりたかったが、今日はこれぐらいにしてやろう。この後まだいろいろすることもあるでのう」
「うう……」
 ラオシンは目をつぶった。
 世界は闇に染まる。闇のなかで、これから己に起こる凌辱を、必死でやり過ごそうと努力した。
 やがてかすかに衣擦きぬずれの音が聞こえると、ラオシンを責めたてていた背後の圧迫物が一瞬にしてとりのぞかれた。
「はぁ……」
 安堵したのはつかの間だ。
 じきに、熱く、したたかなものがラオシンの背後に迫ってきた。
「あっ、いやっ!」
 今更だがラオシンは慌てて逃げようとした。
「こら、ラオ、往生際が悪いぞ」
 半ば冗談めいて、半ば本気めいてアイジャルが叱る。それでもラオシンは逃げようとしてしまい、あらがった。
「こら!」
 パシン、と肉を打つ淫靡な音。
「うう……!」
 ラオシンは無意識にアイジャルの首に腕をまわし、上半身にしがみつく形になってしまう。下半身は相変わらず剝きだしで、そのあらわな臀部を平手で打たれ、身悶えした。
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