サファヴィア秘話 ―妖花満開―

文月 沙織

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「あっ、ああっ、あ、よっ、よせ!」
 床の上で、四肢をふるわせ、ほとんど懇願するような言葉が漏れてしまう。
「ふふふふ、どう、殿下? 気持ち良くなってきたでしょう? どう? もうそろそろ……」
 そこでジャハギルは、アイジャル王にお伺いをたてるように目線をおくる。
 いくら自分の欲望に夢中になっていても、つねに権力者のご機嫌取りを忘れないのは、さすがに宮廷舞踏師として長年宮殿で過ごしてきただけあって、強い者におもねるのを忘れていないからだ。いちばん楽しませなくてはならないのは、自分でもラオシンでもなく国王である。おのれが脇役の道化であることをジャハギルはわきまえていた。
「いかがいたしましょう、陛下?」
 王の意向や感情に気をくばることは忘れないジャハギルであった。
 問われたアイジャルは冷然と、床上でふるえているラオシンを見下ろす。
「ラオ、どうする? ジャハギルの手で楽しみたいか? それともレミにしてもらうか? それとも……」
 アイジャルは酷薄そうに笑った。
「余が直々じきじきにしてやろうか?」
 ラオシンは無念の想いを込めて、アイジャルを見上げた。
 濡れた黒曜石のような瞳で責められても、アイジャルは動じない。とっくに魂は魔性のものに売りわたしてしまったようだ。
 だが、声に出してそう云えば、アイジャルは返したかもしれない。余の魂を奪ってしまったのは、ラオ、おまえなのだと。
 おまえゆえに狂い、おまえゆえに悩み、こうして破倫はりんの道をつきすすみ、善良な臣下たちからは非難され、嘆かれ、それでももはや引き返すことはできず、暴君と影でののしられて、今ここにこうして魔王として立っているのだ、と。おまえを手に入れ、屈服させ、完全に我がものにするため、ただそれだけのために……と。
 だが、そう告げる代わりに、アイジャルの唇はべつの言葉をつむぐ。
「どうじゃ、ラオ。誰を選ぶ? ジャハギルにしてもらうか、レミが良いか? それとも……余が良いのか?」
 ラオシンは切なげに首を振った。
 限界が迫ってきている。
 このままでは、下卑た男とも呼べない男の手によって、人として最も浅ましい姿をさらされることになるかもしれない。
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