サファヴィア秘話 ―妖花満開―

文月 沙織

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「うわぁ。見たかったわ」
 怒りに叫べば、ますますこの残忍で卑劣な連中を喜ばすだけだとラオシンは必死の想いで自制したが、
「そのあと、殿下は客たちの前に可愛いお尻を突き出されてね、皆のまえで、」
「やめろ! もう言うな!」
 我慢できなかった。
 恥辱のあまり視界が真紅に染まる。
 実際にされていたときよりも、時がたって、こうしてあらためて思い出されたときの方が羞恥の痛みというのは強烈になるものだと今ラオシンはつくづく骨身にしみて味わった。
「あらら、また殿下ったら涙ぐまれて。そんなに気にさわったかしら? あたしが言いたいのは、あのときの殿下が本当にお美しくて人気者だったということよ」
「そ、そんな話はもういい!」
 激しく首を振ったせいで黒髪が乱れるが、その様子がまた千切られた大輪の花のようで匂うようになまめかしく見えることにラオシンは気づかない。
「そうよね。昔のことはどうでもいいわよね。それじゃ、始めましょうか。さ、そこに四つん這いになってお尻を出してちょうだいよ」
 ラオシンは切歯せっししながらも、もはやこの場合、ほかにどうすることもできず、悔し涙を浮かべながら、とうとうこの世で最も軽蔑する相手のまえで、言われたとおりの屈辱の姿勢を取る羽目になった。
 もういっそ、早く終わらせて欲しいという自棄やけめいた気持ちもある。
 ぶるぶると身体をふるわせ、屈辱に泣きだしたいのをどうにかこらえ、言われたとおりの姿勢を取る。
 そんな哀れでけなげな従兄の様子を、アイジャルはどう思ったか。
 万にひとつの希望に押されて、つい目がアイジャルを求めてしまう。
 一瞬互いの目が合った。
 アイジャル王の怜悧な顔にはうっすら冷嘲れいちょうがはりついている。ラオシンは顔をうつむけた。
「ああ、本当に綺麗なお尻。殿下のお身体は、どこもかしこもお綺麗ね。肌なんか絹のよう……。でも、こうしてさわると、しっかりとした手応えがあって。飴色あめいろ雪花石膏アラバスターね……」
 
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