サファヴィア秘話 ―妖花満開―

文月 沙織

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 あれほどひどい辱しめと苦痛のなか、もう、とてもこのさき生きてはいけないと思い詰めたものだが、人の身の浅ましさというか、恐ろしさで、地獄でのたうつことにすらこの身は慣れてしまっているのだ。
 自害を考えなかったわけではない。
 だが、あの忌まわしい宦官ジャハンとのあいだに取り交わした誓いを、あらためてアイジャルからも要求されたのだ。
(もしラオが死ねば・・・・・・、死んで余から逃げるつもりならば、余は叔母上の墓をこぼつことになるじゃろう)
 さすがに血のつながった叔父イブラエス王子の墓に手を出すことはできないが、義叔母の――それも他宗教への信仰をうたがわれる――の墓なら本当に破壊し、その亡骸なきがらを晒すかもしれない。それはラオシンにとっては百回死んでも容認できない行為であり、それを承知で死ぬことは、やはりできなかった。 
 生きて恥を晒しつづけるしかラオシンの前に道はなかった。
 そして、連日連夜、こうしておぞましい調教を受けつづけ、身にも心にも、徐々に、被虐の毒を染みこまされてしまった。いや、内に秘めていた官能を引きずり出されつつあるのだ。
 そのことが、ラオシンには何よりも恐ろしかった。
 ただいたぶられ苦痛にのたうつだけなら、まだ耐えられたかもしれない。
 だが、怖いのは……、本当に一番おそろしいのは、拷問にも似たこの行為を受けつづけているあいだに、わずかずつではあるが、おのれの内にひそむ被虐の悦びを自覚しはじめたことだ。そんな劣情がおのれの内にあったということさえ信じがたい。
 だが現に、つい先ほど、感極まったラオシンは、最後の頂点で、悦びの声をあげてしまった。
(ああ……! 私は、私の身体はどうなってしまったのだ……) 
 懊悩しているラオシンに、さらにジャハギルはむごい言葉を放つ。
「ああ、今思い出してもぞくぞくするわぁ。あのときの殿下のお美しかったこと。夜霧を編んだような漆黒のお召物に黒いヴェール。歩くすがたは本当に月の女神のようだったわぁ。しかも……」
 ふふふふ、とジャハギルはいやらしい笑いを作る。
「女神のお尻には蛇紋石サーペンティンが……」
「言うなっ!」
 ふたたび全身の血が逆流するかのように燃える。
 だが、次の瞬間には、あのとき含まされた貴石の感触が身体によみがえり、ラオシンを戦慄させる。
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