サファヴィア秘話 ―妖花満開―

文月 沙織

文字の大きさ
上 下
39 / 94

しおりを挟む
 それを少しはなれたところでぼんやりとアラムは見ている。その表情は、一仕事ついてやや疲れたようでもあれば、自分の成し遂げた仕事をおろそかにされたような、いくばくかの悔しさも滲ませている。
 そんな様々の様子を、アイジャルはいかにも王者らしく莞爾かんじとした笑いを浮かべて、高見から見物するつもりのようだ。
 必死に無表情をよそおっていたラオシンだが、ジャハギルの毛深い手ににぎられた美しく淫靡な道具を見ると、かすかに震えた。
「よ、よせ、来るな!」
 うろたえて、後退りするラオシンを、周囲にいた宦官たちがおさえる。
 どうあっても逃げ場などないが、それでもほとんど本能的な恐怖と忌避感におそわれてラオシンは抗わずにいられない。
「さ、殿下、良い子だからまたお尻を出してちょうだい。あんな子どもの舌なんかより、よっぽど楽しい気持ちにさせてやるわ。あたしも、こっちの腕にかけては巷じゃ相当のもんよ。どんな堅物だろうが、深窓のお嬢様だろうが、ジャハギル様の手管てくだにかかったら、生まれながらの娼婦のように悶えるもんよ。殿下をもう一回天国へつれていってあげるわ」
 おぞましい言葉にラオシンは蒼白になった。
「い、いやだ! もう嫌だ! さがれ! く、来るな!」
 必死の抵抗は、かえって獣の心を持つこの男の嗜虐をそそるようだ。
 ジャハギルは髭の剃りあとが青く不気味に見える縦長の顔を、いっそう醜くゆがめて笑った。
「ん、もう。殿下ってば、本当に聞き分けないわねぇ。あたしは殿下にとったら踊りの師匠でしょう? 『悦楽の園』で、みっちり教えてあげたじゃないの? そのおかげで、宴で殿下は花形になれたんじゃないのよ」
 かっ、と全身の血が熱く燃えるのをラオシンは感じた。同時に、忘れようにも忘れられない、あの屈辱の夜のことがまざまざと思い出される。
 脳をとろかす麻薬をふくんだ香料、淫楽な音楽、男たちの嘲笑。
 そのなかで、煽情的な踊り子の衣装を無理やり着せられ、羞恥に死にそうになりながらも、死にもの狂いで踊っていた自分の淫らで悲しい姿を、ラオシンは歯軋りしながら思い出した。
 よくぞあの夜、自分は慚死ざんししなかったものだと思う。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...