サファヴィア秘話 ―妖花満開―

文月 沙織

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 ちゅっ、ちゅっ、くちゅ……。
 淫らきわまる音が石床の上をすべっていく。
「ううっ、ううっ、うおっ……!」
 宦官兵たちの手はすでに離れているため、もはやラオシンの上半身は快楽をあらわすことを止めれず、床上でおおいにのたうった。
 しなやかな肉体はうねり、もだえ、全身から光の粒のような汗水をしたたらせ、唇からは桃色の吐息を吐きつづける。顔は絶世の美男子でありながら、若獅子の身体に、淫蛇のさがを持ち合わせた、ありうべからざる姿を見せるその様は、凄絶なまでに淫らで、壮絶に美しい姿だった。
 妖艶無比ようえんむひのその姿態したいから、誰もが目を離せないでいる。できるわけがない。もし、今のラオシンから目を離すことのできる人間がいるとしたら、心が木石だろう。
「はぁ、はぁ、はぁっ……ああ……ん、あっ、も、もう!」
 いつしかラオシンは、聞くものの耳をうたがわせるような甘い声をはなっていた。絶頂が近づいている証しだ。
 いくら生まれながらの貴顕の身であり高貴な紫の血を引く王子であっても、やはり十九の肉体は、はじける若さとあいまって、生きている証しをあらわさずにはいられないのだ。
「おお、くか? 遂きそうか?」
 アイジャルの声はどこかわざとらしげだ。
「ラオ、無理をするな。何故歯をくいしばるのじゃ? 身体はすでに素直になっておるではないか?」
「ち、ちが……!」
 世にも美しい人獣のまえに静かに近づいたアイジャルは、膝をつくと、ラオシンの美しい頬を濡らす涙を舌ですくいとった。
 ラオシンが限度を越した快楽と屈辱のために流した涙は、アイジャルにとってはまたとない美酒うまざけだったろう。
 高貴な美青年たちの痴戯ちぎに、もっとも反応したのは、この場でゆいいつ女であるレミだったかもしれない。
 土色めいた肌はあぶられたように赤黒く火照ほてり、全身燃えはじめた炭の色に染まっている。レミの他は男性であっても男性ではない宦官たちと、人並みはずれた体躯に女の心――それも人並みはずれて卑しい女心――を持つジャハギルである。
 レミの野良猫のような目はぎらぎらと光り、美青年が美青年をなぶる図を食い入るように見つめている。
 他の宦官と変成男子へんせいだんしは、これまたそれぞれの屈折した欲望に身を焦がしぬきながら、アイジャル=サファヴィス王が、奴隷王子ラオシン=シャーディーの頬から首へと接吻を雨のように降りそそいでいる姿を凝視している。
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