サファヴィア秘話 ―妖花満開―

文月 沙織

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蜥蜴と蕾 一

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 アラムの図に乗ったような行為を、誰も止めず、皆面白そうに、かつての忠実な小姓にもてあそばれて喘ぐラオシンを見下ろしている。
「はっ、ああっ、ああっ、ア、アラム、もう、やめ……」
 だが、少年の指の動きがさらにはやくなろうとした瞬間を見計らって、さすがにアイジャルは水を差した。
「待て、最後まではゆるさぬぞ」
 不機嫌な王の声音にアラムは我を取りもどして青くなる。
「は、はい」
 だが、アイジャルの怒りは、アラムよりも、石床の上でのたうつ麗人へと向かう。
「まったく、なんという淫乱じゃ! こんな子どもの手であれもなく乱れおって」
 演技ではなく、本当にアイジャルは怒っていた。
「恥を知れ!」
 アイジャルの皮沓サンダルの先がラオシンの背を蹴った。
「あっ!」
 叫んだのは蹴られたラオシンではなく、かたわらのアラムだった。
 その場にいた全員は驚愕の目で、蹴ったアイジャルと、蹴られたラオシンを見ている。
 傍目はためにも、加減した蹴り方だとはわかるが、それでも今までアイジャル王がラオシンにこんな態度を取ったことはなかった。ひどいはずかしめは散々しても、アイジャルはラオシンの身体を傷つけるようなことはしなかった。
「な、何をする!」
 宦官たちの手がゆるみ、ラオシンは身体をよじって、アイジャルを恨みと怒りのこもった目で睨んだ。これほど痛めつけられてもラオシンの王子としての気骨きこつがれていなかったのだ。
「ラオが悪いのじゃ! ラオが余以外の者の手で乱れるからじゃ!」
 理不尽な言葉にラオシンは叫ばずにいられない。
「おまえがさせたのではないか!」
 ラオシンはまたも王者を〝おまえ〟呼ばわりした。 
 声にも態度にも、直前までアラムの指でもてあそばれ、色っぽい声をあげていた男と同一人物とは思えないほどの気迫がみなぎっている。これほど連日連夜、想像を絶するようないたぶりを受け、おとしめられつづけていても、ラオシンの生来の不遜なまでの自尊心と誇りは、けっして打ちくだかれてはおらず、そのことが、つい先ほどまで下卑た目を向けていた一同を驚愕させ、ほとんど感動させた。
「うるさい!」
 だが、そんな従兄のふてぶてしいまでの気概は、かえってアイジャルの怒りを燃え上がらせた。
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