サファヴィア秘話 ―妖花満開―

文月 沙織

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 だが運命の転変により、ラオシンは男娼に堕とされ、王の紅閨こうけいに男妾として飼われることになり、彼に忠節を尽くすアラムもまた、主を助けられなかったどころか、敵のたくらみに加担し、主を地獄に突き落とすことに一役買ってしまったという、罪の贖罪のため、みずから望んで男性性器を切り落として宦官となった。二人ともに、本来なら得たはずの輝かしい未来を失ったことになるのだ。
 そういった二人のあいだにあったのは、互いに、相手によって人生を狂わせられたという恨み憎しみでもれば、やはり消えない主従の絆でもあり、ともに地獄に墜ちた者同士の連帯感でもあれば、同病相哀れむような親近感であったろうか。
 それだけなら、この燦燦さんさんとかがやく獄舎ごくしゃのなかで、ともに寄り添いあい慰めあって生きていけたかもしれない。
 だが、二人の関係を複雑にしているのは、アラムの消えることなきラオシンへの想い、というか情欲であった。
「ラオシン様、どうですか? 今、指が二本入りましたよ。ほら、とうとう根本まで入ってしまいました」
 アラムの声は嬉しそうである。無理もないだろう。今、彼の指は、彼が失くした幼い男根の役割を果たし、夢にまでみた想い人の内側に侵入しているのだ。
「ひぅっ……!」
「痛くはないでしょう? だって、ほら……ラオシン様の前は、こんなに」
 空いていた少年の左手がラオシンの前方に伸ばされる。
「はぅっ……!」
 ラオシンは身をよじった。刹那せつな、汗に照りかがやく腰がねじれて、なんともいえず凄艶せいえんな色気がはじける。
「うれしい。あの潔癖だったラオシン様が、今わたしの指でこんなに感じられて……」
 アラムの顔に、一瞬、無邪気だった少年の表情があらわれる。すぐ目の前にあっても、決して手に入ることがないものとあきらめていた極上の菓子をほおばって満足している少年の顔である。
「うれしい……」
「あっ、ああ! よ、よせ、もう、やめろぉ!」
 指の動きが微妙に変化し、はやくなったようだ。
「もっと感じてください」
 純粋な子どもの姿に、老練ろうれんな娼婦の手管てくだを身に付けてしまったこの異形の宦官少年は、これも後宮という伏魔殿の産物だろうか。
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