サファヴィア秘話 ―妖花満開―

文月 沙織

文字の大きさ
上 下
23 / 94

散らされる花々 一

しおりを挟む
「陛下、幾度ぐらい打ちましょうか?」
「そうじゃな、三回、いや、五回は打て。哀れじゃが、愚かな主を持った報いじゃ」
「では」
 ヒュッー、と黒革の先がうなり、アラムは生成きなり色のお仕着せの衣に首をすくめた。
 激しい音が室に響く。
 息を呑む音につづいて、アラムの悲鳴が響きわたる。
「やめろ! もう止せ!」
 宦官たちに抑えつけられながらも、もがくラオシン。彼の動きにあわせて黒髪が揺れる様子は、石床の上で引きちぎられた黒蘭の花弁を思わせる。
 女の持つ鞭の先は、アラムのかぼそい手の上でむごい音を三度までかさねた。
「今日のところは、それぐらいでよかろうか」
 アイジャルは、さすがに容赦を見せた。
 こらえた啜り泣きがおさまると、アラムの可憐な唇からこぼれたのは「陛下の御恩寵に感謝します」という一言だった。 
「だが、まだ許すわけではない。アラム、その道具を使いやすくするために、おまえ自身の口で準備をするがよい」
「く、口で……」
 アラムが茶褐色の頬を黒く染め、おずおずと王を見上げる。
「そうじゃ。香油は使ってはならぬ。ラオの身体に入れる前に、おまえ自身の口や舌で湿らすのじゃ」
「ああ……!」 ラオシンは苦しげに首を左右に振った。
 どうあってもアイジャルはアラムの手によってラオシンに屈辱を与えたいのだ。忠臣の手によって堕とされ乱れるラオシンを見たいのだ。あまりの残忍さ、下品さに、ラオシンは歯噛みした。
「さ、なにをしておる? 早くせい、日が暮れてしまうではないか。客人を迎えるのに間に合わぬぞ」
 催促の言葉は、またラオシンの神経をひっかき、切り裂いた。本気でアイジャルは目的を遂行するつもりだ。
「や、やめろぉ!」
 ラオシンは四肢に命を込めて動いていた。
「おおっ、」
 ラオシンのすぐ側で彼を抑えこんでいた宦官が思わず声を出すほどに、ラオシン自身でも驚くほどの力を込めた抵抗だった。
「はなせぇぇぇ!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

処理中です...