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七
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連日連夜、王の寵愛にすっかり身も心も男妾に変わり果てたかと思われていたラオシンだが、誰よりも高い気位と自尊心はけっして消えてはいなかったことを見せた。
後宮の最奥に住むようになってからも、舞踏の稽古は――強制的ではあったが――欠かさなかったので、体力は見た目ほどには衰えてはいなかったのである。
床を踏みしめる足腰はしなやかななかにも強靭さを思わせて、アイジャルやクマヌに油断できないものを感じさせる。
そんなラオシンの抵抗をアイジャルをさも面白そうに、そして満足そうに見つめてから、おもむろに言葉を吐いた。
「ラオは本当に困った奴じゃ。これほど聞き分けが悪いとは……。あまり余を困らせるでない。それほどに嫌がるのならば、仕方あるまい。鞭を持て」
一瞬、ほんの一瞬だけ、ラオシンは動揺した。
(アイジャル……私を打つのか)
勿論、今までにも手酷い責めやいたぶりは幾度となく受けたが、口ではどれほど脅かしてはみても、アイジャルはラオシンの肌を傷つけるような真似はいっさいしなかった。
たしかに素手による肉体への打擲は受けたが、跡にのこるようなことはなく、痛みは甘美な悦楽をのこしてすぐ引いてしまう程度のものだった。
その辺りはアイジャルは気を使っていたようで、その無言の配慮を、ラオシンも悟ってはいた。
だが、今、その気配りは無くなってしまった。
「何をしておる? 早く鞭をもってまいれ!」
樺の鞭がうやうやしく別の侍女の手によってもたらされた。
室の空気は張りつめ、冷えていく。
アラムは真っ青になり、ジャハギルもやや鼻白んだ様子を見せた。レミだけはきつい黒目を興奮に光らせている。
アイジャルが支配者の冷酷そうな顔を見せ、鞭を高々と振り上げた。
後宮の最奥に住むようになってからも、舞踏の稽古は――強制的ではあったが――欠かさなかったので、体力は見た目ほどには衰えてはいなかったのである。
床を踏みしめる足腰はしなやかななかにも強靭さを思わせて、アイジャルやクマヌに油断できないものを感じさせる。
そんなラオシンの抵抗をアイジャルをさも面白そうに、そして満足そうに見つめてから、おもむろに言葉を吐いた。
「ラオは本当に困った奴じゃ。これほど聞き分けが悪いとは……。あまり余を困らせるでない。それほどに嫌がるのならば、仕方あるまい。鞭を持て」
一瞬、ほんの一瞬だけ、ラオシンは動揺した。
(アイジャル……私を打つのか)
勿論、今までにも手酷い責めやいたぶりは幾度となく受けたが、口ではどれほど脅かしてはみても、アイジャルはラオシンの肌を傷つけるような真似はいっさいしなかった。
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だが、今、その気配りは無くなってしまった。
「何をしておる? 早く鞭をもってまいれ!」
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室の空気は張りつめ、冷えていく。
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