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三
しおりを挟む今度の声は、先ほどの溜息のような呟きではなく、たしかにはっきりとディアニスの耳に響いた。当然、アイジャル国王の耳にも届いているはずだ。
なにか、異様なものが……、異常なことが、薄布一枚向こうで行われている。そう、はっきりとディアニスは知覚した。
「失礼いたします」
もはや躊躇しておられず、ディアニスは思わず立ち上がり、王の許可を待たず、そのどこか艶かしさを思わせる布の扉を開いてしまった。
「な……!」
薄紅の布を開いた瞬間、ディアニスは腰を抜かさんばかりに驚愕した。
そこでは、真面目な学者肌の彼が想像もしなかったことが行われていたのだ。
「まったく、困ったことだ」
めずらしくアイジャルが眉をしかめたが、目は笑っていることにラオシンは気づいた。
「何があったのだ?」
ラオシンは午睡を取っていたときで、寝起きのだるい身体を無理やり起こした。
まとっている白絹の衣の胸もとが開いて、差し込んでくる午後の陽光が鳶色の肌を照らす。
「ディアニスを知っているか? 学者貴族の」
「ディアニス? ディアニス=テベルか?」
覚えている。武芸はそれほどではないが、若手の学者として将来を嘱望されている。学問所でともに学んだときは、何度か議論を交わした相手でもある。議論に関しては五分と五分で勝ったとも負けたとも思わないが、仮に負けたとしても、彼が相手なら満足だったろう。
美男というわけではないが、清々しい清潔な雰囲気をもつ魅力的な青年だった。ラオシンより三つか四つ年上だったはずだ。
「真面目過ぎるのも困りものだ。奴は、どうあっても王族の男子を男妾にするのは人倫の道にもとるとかどうとか抜かして、余の政道に文句をつけるのだ」
「ああ……」
ラオシンはディアニスの生真面目な容貌を思い出して、少しやるせなくなった。
あの見るからに謹厳な青年が、今のラオシンを見れば、おそらくは軽蔑するだろう。
「あまりうるさく言うので、流罪にしてやろうかと思うのだが、その前に一度だけ会って、話を聞くだけ聞いてやろうと思っておる」
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