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二
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学問を貴ぶ家に生まれたディアニスは、武芸にはそれほど熱心ではなかったので、場の気配を察するのが遅い。
(誰かいるのか……)
侍女か宦官が控えているのだろうか。
最初はそう思ったが、やがて奇妙な音が鼓膜にしのびこんできた。
は……あぁっ……。
空耳ではない。確かにそんな声が聞こえた。
男の声だ。若い男。どこかで聞いた記憶があるような。
さらに耳を凝らすと、
うっ……ううっ!
尋常な声ではない。
声に合わせて、薄紅の薄絹が、かすかに揺れているようだ。
誰か具合が悪いのかもしれない。そう思ったディアニスは国王に向かって声を出していた。
「あ、あの陛下……、誰かが」
アイジャル国王は背を見せたまま呟くように言った。
「捨てておけ」
確かに従者が具合が悪いからといって、国王に訴えるべき筋ではないと思うのだが、人が苦しんでいるのを放置していいわけはなく、善良で生真面目なディアニスはさらに声をあげずにいられなかった。
「で、ですが。あの、失礼して様子を見てまいります」
アイジャル国王が書類を読み終えるにはまだ時間がかかりそうなので、ディアニスはそれだけ言うと、身を起こそうとした。
「いつものことじゃ」
読み終えた書類を箱に投げ捨てる音がひびく。
「え? ですが」
「あれはこらえ性がないからのぅ。今日は特別に鍛錬をさせておるのじゃ」
まるで犬か馬を仕込むような言い方である。
何故かその言葉に、ディアニスは背が寒くなった。
「うう……!」
(誰かいるのか……)
侍女か宦官が控えているのだろうか。
最初はそう思ったが、やがて奇妙な音が鼓膜にしのびこんできた。
は……あぁっ……。
空耳ではない。確かにそんな声が聞こえた。
男の声だ。若い男。どこかで聞いた記憶があるような。
さらに耳を凝らすと、
うっ……ううっ!
尋常な声ではない。
声に合わせて、薄紅の薄絹が、かすかに揺れているようだ。
誰か具合が悪いのかもしれない。そう思ったディアニスは国王に向かって声を出していた。
「あ、あの陛下……、誰かが」
アイジャル国王は背を見せたまま呟くように言った。
「捨てておけ」
確かに従者が具合が悪いからといって、国王に訴えるべき筋ではないと思うのだが、人が苦しんでいるのを放置していいわけはなく、善良で生真面目なディアニスはさらに声をあげずにいられなかった。
「で、ですが。あの、失礼して様子を見てまいります」
アイジャル国王が書類を読み終えるにはまだ時間がかかりそうなので、ディアニスはそれだけ言うと、身を起こそうとした。
「いつものことじゃ」
読み終えた書類を箱に投げ捨てる音がひびく。
「え? ですが」
「あれはこらえ性がないからのぅ。今日は特別に鍛錬をさせておるのじゃ」
まるで犬か馬を仕込むような言い方である。
何故かその言葉に、ディアニスは背が寒くなった。
「うう……!」
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