翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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桜葬 四

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 拒絶の声が甘い音の媚薬となって杉屋の鼓膜に染みこんでいく。
 最後にもがいた竹弥は、女のような声をあげた。
「ああっ、駄目ぇっ……。はぁぁぁぁっ――!」

 自分の動きにあわせて竹弥がふるえ、あがきもがくのを楽しみ尽くし、杉屋はぎりぎりまで我慢してから、おのれを解放した。
 その瞬間、世界がはじけた。

 天からまた声が聞こえてくる。
 けたけたと、痛快そうに笑う複数の声。
 杉屋や竹弥よりも、ずっと長くこの屋敷に住んでいる連中、いわばこの屋敷の先住者たちの声だ。

 あははははは――。
 見ろよ、あの様子を。
 まぁ、なんて淫らな。
 そういお前だってよっぽど淫らではないか。
 うるさいねぇ。

 おまえたち、うるさいぞ、と声をかけようと杉屋が天井をあおいだ瞬間、襖が開いた。


 まず見えたのは闖入者の二本の足だった。
「おい……」
 相手と目が合った。
 滅多にないことだが、杉屋は心底、驚愕した。
 相手の目が、異常に暗く、はかりしれない闇を秘めていたからだ。
 数秒、お互い目を合わせたあと、相手の男は笑った。杉屋でさえぞっとする笑い方だった。


 襖をあけて入って来た男――、浦部の顔が醜悪にゆがんだ。
「おまえ、なにを……」
 言いかけて言葉が途切れたのは、彼の衣服が濡れているように見えたからだ。
「お、おまえ!」
 それが血なのだと気づいた次の瞬間、杉屋の視界に入ったのは闇をくつがえす真紅の炎だった。 

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