翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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玻璃責め 十

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 激しい屈辱、怒り、憎悪を感じながらも、どうあっても逃れられないこの状況で、渦巻く感情がかたちを変え、異形の喜びとなって火を吹く。
 マゾヒストとは、そういうものなのかもしれない。苦痛を快楽と受けとめ、そのゆがんだへきゆえにまた傷つき、さらにまた感じてしまう。
 竹弥は、今、まさにそんな異形の、別の生き物に変じようとしているのだ。

 あああああああ――……

「凄まじいね。もはや動いてもいないのに、それほど感じて。おお……また大きくなってきた。ハハハハハ」
 早田の侮辱の言葉にまた燃える。ほとんど本能に突きうごかされるかたちで動き、喜びをもとめてしまう。
 もはや杉屋に強制されなくとも、竹弥はみずから腰を動かしていた。
 脳髄が焼き切れるような快感が全身にはしる。

 ああ! 駄目、駄目だ! ああっ、駄目ぇ!

 女が吐くような気恥ずかしい言葉が無意識で口から飛び出るのを、止めようがない。
  
 幾度目かの絶頂の瞬間、竹弥の意識はとぎれた。


 のぞむ金を払うから竹弥を抱きたいとせがむ早田を杉屋はどうにかしてなだめ、「それは次のときに」とごまかして帰した。
 気を失った竹弥と杉屋ふたりだけの屋敷はひどく静かだ。
 いや、屋敷にいるのは二人だけではなかった。

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