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玻璃責め 九

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 この屋敷にとらわれ、幾たびとなく凌辱され、神経のぎりぎりの、最後の一線まで追い詰められてきた竹弥であり、すさまじい責めにも、おそろしいことに慣れて――というより感受性が摩滅して、それが幸いしてどうにか持ちこたえてきたのだが――きたが、この男二人がかりの粘着質な責めは、久々に、竹弥のなかの消えかけていた反抗心と不服従の精神に、新たな火をつけたようだ。
「ほう……」
 ますます興をあおられたように早田はおもしろそうな顔になる。
 今にもほふられそうになっていた生贄の子羊が、思いもよらず小さな爪をたてて、逃げようとあがくのを楽しそうに見ている。
「こら、暴れるな。傷つくぞ」
 半ば脅すように、半ば揶揄からかうように杉屋が耳もとにささやいた。
「うーっ」
 のけぞり、両脚を踏ん張るようにして、どうにかして竹弥はあらがった。
 屈辱に燃えるように赤く染まった顔には、悔しさと怒りがにじんでいる。
 誇りや自尊心をずたずたにされる行為を強いられながらも、細い身体のうちにひそむ竹弥の生来の芯の強さは、けっして打ち砕かれていなかったようだ。
 だが、その屈服することができない凛冽りんれつの気性が、また竹弥を追い詰める。
 しばし、二人は互いに力をこめて抗った。お互いの力と熱情が拮抗しあい、静止していた。
「本当にこまったじゃじゃ馬だな、おまえは」
 笑いながら、杉屋は竹弥を抱く腕に力をこめた。
 やはり、体勢的に、どうあっても竹弥の方が不利なのだ。
(あっ……ああっ……!)
 悲しい抵抗の末、竹弥は陥落の声をあげる。

 刹那――、竹弥の身の内でなにかが弾けた。
(ああっ! だ、駄目だ――!)

 男の手によって、小さな種を探り当てられ、水や糧を与えらた末にはぐくまれ、無理やりに成長させられてしまった花が、竹弥のなかで咲き誇ろうとしている。
 その大輪の妖しい花に名をつけるのならば「被虐の悦楽」だろうか。
 今、花弁をひろげ、最大限に開花した。

 はあああああ――!!

 全身でもって、竹弥は弾けていた。
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