197 / 225
玻璃責め 六
しおりを挟む
理解できた途端、頬が燃え、背が怒りと恐怖にこわばった。
「どうだい? 特注で作らせたものだ。かなり高いのだよ」
茸の形をした部分は、よく見ると黒い水晶のようにも見え、かなり値が張るものだということはわかる。
「これはすごいですね。ちょっとした芸術品じゃないですか?」
杉屋の笑い声に神経を焼かれそうだ。
「さ、これに乗ってみてごらん」
恐怖と恥辱と怒りに全身が燃えた。
「なにをそんなに驚いているんだい? これぐらいたいしたことじゃないだろう? ほら、こんなに小さなものなのだから」
言うや、早田が右手で上の部分を軽くにぎる。たしかに大人の男の片手でほぼつつめるほどの寸法だ。
大きく見えるのは、下の土台の部分が巨大なせいだ。手に持ってつかうのではなく、早田が好むように上にまたがって使うようにこしらえてあるもので、その意図するところからしてひどく下品な気がして、竹弥は目を伏せずにいられない。
「そんな嫌そうな顔をするものじゃないよ。よくご覧。綺麗なものだろう。黒方解石というらしい」
さも愛おしげに早田は先端の幅広の部分を指で撫でる。いやらしい……、と竹弥は少女のように嫌悪にふるえた。
「アメリカで出た鉱物でね。まぁ、宝石としては価値が低いが、作り方次第では翡翠や黒曜石におとらぬ貴重品となるよ。安いときに買っておいて良かった。ほら……、このなめらかな感触。すばらしいものだ」
「色もなかなかいいですね」
杉屋が目を細めた。
「そうだろう?」
純粋な黒というより、やや濁った赤墨色めいた色が、無機質の色にほんのりと熱をふくませたように映える。黒翡翠や黒曜石ほどの美しさはなく、スピネルやオニキスのような艶もないが、これはこれで不思議と味わいがある。作り方しだいでそれなりの貴石となるのだろう。
「これを入れてみたくないかい?」
指先で、先端を軽くたたく仕草が、なんとも人を馬鹿にしている。
竹弥はあらためて怒りにふるえた。
「どうだい? 特注で作らせたものだ。かなり高いのだよ」
茸の形をした部分は、よく見ると黒い水晶のようにも見え、かなり値が張るものだということはわかる。
「これはすごいですね。ちょっとした芸術品じゃないですか?」
杉屋の笑い声に神経を焼かれそうだ。
「さ、これに乗ってみてごらん」
恐怖と恥辱と怒りに全身が燃えた。
「なにをそんなに驚いているんだい? これぐらいたいしたことじゃないだろう? ほら、こんなに小さなものなのだから」
言うや、早田が右手で上の部分を軽くにぎる。たしかに大人の男の片手でほぼつつめるほどの寸法だ。
大きく見えるのは、下の土台の部分が巨大なせいだ。手に持ってつかうのではなく、早田が好むように上にまたがって使うようにこしらえてあるもので、その意図するところからしてひどく下品な気がして、竹弥は目を伏せずにいられない。
「そんな嫌そうな顔をするものじゃないよ。よくご覧。綺麗なものだろう。黒方解石というらしい」
さも愛おしげに早田は先端の幅広の部分を指で撫でる。いやらしい……、と竹弥は少女のように嫌悪にふるえた。
「アメリカで出た鉱物でね。まぁ、宝石としては価値が低いが、作り方次第では翡翠や黒曜石におとらぬ貴重品となるよ。安いときに買っておいて良かった。ほら……、このなめらかな感触。すばらしいものだ」
「色もなかなかいいですね」
杉屋が目を細めた。
「そうだろう?」
純粋な黒というより、やや濁った赤墨色めいた色が、無機質の色にほんのりと熱をふくませたように映える。黒翡翠や黒曜石ほどの美しさはなく、スピネルやオニキスのような艶もないが、これはこれで不思議と味わいがある。作り方しだいでそれなりの貴石となるのだろう。
「これを入れてみたくないかい?」
指先で、先端を軽くたたく仕草が、なんとも人を馬鹿にしている。
竹弥はあらためて怒りにふるえた。
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説



ふたなり治験棟
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!


朔の生きる道
ほたる
BL
ヤンキーくんは排泄障害より
主人公は瀬咲 朔。
おなじみの排泄障害や腸疾患にプラスして、四肢障害やてんかん等の疾病を患っている。
特別支援学校 中等部で共に学ぶユニークな仲間たちとの青春と医療ケアのお話。

身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる