翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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玻璃責め 六

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 理解できた途端、頬が燃え、背が怒りと恐怖にこわばった。
「どうだい? 特注で作らせたものだ。かなり高いのだよ」
 茸の形をした部分は、よく見ると黒い水晶のようにも見え、かなり値が張るものだということはわかる。
「これはすごいですね。ちょっとした芸術品じゃないですか?」
 杉屋の笑い声に神経を焼かれそうだ。
「さ、これに乗ってみてごらん」
 恐怖と恥辱と怒りに全身が燃えた。
「なにをそんなに驚いているんだい? これぐらいたいしたことじゃないだろう? ほら、こんなに小さなものなのだから」
 言うや、早田が右手で上の部分を軽くにぎる。たしかに大人の男の片手でほぼつつめるほどの寸法だ。
 大きく見えるのは、下の土台の部分が巨大なせいだ。手に持ってつかうのではなく、早田が好むように上にまたがって使うようにこしらえてあるもので、その意図するところからしてひどく下品な気がして、竹弥は目を伏せずにいられない。
「そんな嫌そうな顔をするものじゃないよ。よくご覧。綺麗なものだろう。黒方解石シャーマナイトというらしい」
 さも愛おしげに早田は先端の幅広の部分を指で撫でる。いやらしい……、と竹弥は少女のように嫌悪にふるえた。
「アメリカで出た鉱物でね。まぁ、宝石としては価値が低いが、作り方次第では翡翠や黒曜石におとらぬ貴重品となるよ。安いときに買っておいて良かった。ほら……、このなめらかな感触。すばらしいものだ」
「色もなかなかいいですね」
 杉屋が目を細めた。
「そうだろう?」
 純粋な黒というより、やや濁った赤墨あかずみ色めいた色が、無機質の色にほんのりと熱をふくませたように映える。黒翡翠や黒曜石ほどの美しさはなく、スピネルやオニキスのような艶もないが、これはこれで不思議と味わいがある。作り方しだいでそれなりの貴石となるのだろう。
「これを入れてみたくないかい?」
 指先で、先端を軽くたたく仕草が、なんとも人を馬鹿にしている。
 竹弥はあらためて怒りにふるえた。
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