翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

文字の大きさ
上 下
184 / 225

花の屍 四

しおりを挟む
「これは……また、すごい格好だな。可哀想に」
 だが、言葉とは裏腹に男の声には悦びがふくまれている。
「辛そうだねぇ」
 言いつつ、いそいそと褥のそばに寄ってくる男を竹弥は心から呪った。
「ああ、猿ぐつわを嵌められているんだね。……どうしたものだろう? 外してあげたいが」
「それはもう少し待ってください。万が一舌でも噛まれたら大事だ」
 早田のあとから入室してきた杉屋の言葉に、竹弥は全身をこわばらせた。
 苦しさが、さらにつのる。この男は、今回もそばにいて、竹弥が嬲られるのを見物するつもりなのだ。
「そうだね。だが、声が聞けないのは残念だな。竹弥君の声はなかなか美声だからね」
 ふっ……。杉屋が笑う。
「竹弥君だなんて。今宵は竹弥はお客さんのものですよ。煮て食おうが焼いて食おうが、お客さんの御自由。今宵の竹弥はお客さん……いや、早田さんの一夜妻であり奴隷でもあるんですから、堂々と、竹弥と呼び捨てにされるといい」 
 竹弥は怒りに背に汗がわくのを感じた。
「ふふふ。本当にいいのかい?」
「ええ。かまいませんよ。こいつは、かなりじゃじゃ馬ですからね。たまに他の男の手によって躾けられたら、ちょっとは大人しくなるでしょうよ」
 竹弥は、杉屋の言葉に嘔吐すら感じた。
「それじゃ、遠慮なく」
「うっ!」
 男の手が、臀部に触れてきた。
(こんな、こんな男に……!)
 おぞましさに竹弥は不自然な体勢で、必死に身体をよじる。
「こらこら、暴れるんじゃないよ。……ああ、やっぱり若い男の肌は、張りがあるね。この尻はまるで鞠のようだ。つけば、さぞ元気に跳ねるだろうな」
 早田は夢中になって、室に入ってきたときのままでコートや背広を脱ぐこともせず、帽子すら被ったままで竹弥の臀部を両手で撫でまわす。普段は紳士ぶっているくせに、今や卑しい欲望をかくそうともしない。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

ふたなり治験棟

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

朔の生きる道

ほたる
BL
ヤンキーくんは排泄障害より 主人公は瀬咲 朔。 おなじみの排泄障害や腸疾患にプラスして、四肢障害やてんかん等の疾病を患っている。 特別支援学校 中等部で共に学ぶユニークな仲間たちとの青春と医療ケアのお話。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

処理中です...