翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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花の屍 二

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 幾度となく強制された行為で、どういうわけか異常に竹弥に執着し、欲望を持っていることは気づいたが、だが、それほど執着を燃やす相手を、なぜ他の男に触らせようとするのか。浦部のときにも抱いた疑問がまた胸によみがえる。
 この男はいったいなんなのだろう。この男の目的はなんなのだろう。単に欲望をはなちたいだけなら、東京ならさがせば、そういう場所もあるはずだ。金が目的とも、もはや思えない。
「あ、あんた、いったい何なんだよ?」
 怒りと苛立ちと悔しさをこめて竹弥は叫ぶように問うていた。
「あんたは、あんたは、いったい何がしたいんだよ?」
「決まっているさ。おまえの、とびきり色っぽい顔が見たいだけさ」
 心から楽しそうに杉屋が笑う。
「お、俺に、本当にあの男に身体売れっていうのかよ?」
「それでおまえのお気に入りの坊やが助かるんだぞ。それに、本当に身体を交わらせるわけじゃない。ただ、一晩、あの中年男の望むことをしてやれば、それでいいんだよ」
 女衒のような言動を、恥とも思わぬ男に、これ以上何を言っても無駄だと竹弥はあきらめねばならなかった。
 

「ううっ……!」
 猿ぐつわを嵌められた口からくぐもった苦悶のうめき声がもれる。
 竹弥は後ろ手に縛られて、布団の上にうつ伏せに横たわっていた。
 あれから、杉屋とはもう話すことさえ諦めた竹弥だが、彼の要求を呑むことなどできるわけもなく、もう一度逃亡をはかってみたのだ。
 杉屋に言われるままに風呂場に行き、浴衣に着替えて室に入ろうとしたしたところで、咄嗟に逃げだした。まさか浴衣姿で逃げるとは思わず油断するだろうと踏んだのだが、相手は油断していてさえ竹弥に追いついてきたのだ。
 結果、今回も門前であっさりと捕まえられてしまった。
「くうう……」
 竹弥は悔しさと苦しさに声を漏らす。
 うつ伏せで両手首を背で紐縄で縛られているだけでも充分くるしいうえに、両脚も曲げられ、両足首を交差するかたちで縛られてしまった。
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