翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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乱れ桜 四

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「ああっ!」
 言わずとしれた杉屋が立って自分を見ていた。
 ズボンと下着を膝までおろして、膝立ちのかっこうで前と後ろを同時に弄っている今の自分の姿を見ているのだ。
「ああっ、ああっ、あっ!」 
 混乱して、悲鳴のような声を吐きながら、竹弥は前かがみになって、今さら無意味だろうが、身体を隠そうとした。
「まったくおまえは無防備だな。ああ、こんなにして、しょうがない奴だ」
 身体をよじって逃れようとする竹弥を抑え込み、杉屋は、先ほどまで竹弥が必死に刺激していた二か所の肉体の中心に無遠慮に触れてくる。まるで、そこはどちらも俺のものだ、と云わんがほどに当たりまえという顔で。
「よしよし。少しほったらかしにしていたからな。今日はたっぷり可愛がってやるぞ」
「やめ! いや、いやだ!」
 恐怖と恥辱で竹弥は混乱の極みだった。こんな惨めな姿を見られてしまうとは……。
「今更、恥じ入るな。あんな可愛い姿を見せつけておいて」
「よ、よせ! あっ、さわるな!」
 前後の中心に触れてくる相手の手を、必死に防ごうとしたが、くらべものにならないほど強い力で、逆に竹弥の手は抑え込まれてしまう。
「いやだって言っているだろう!」
「もういい加減に認めろ。おまえは、本当はこういうことが好きな人間なんだよ」
 冷たい薄ら笑いを浮かべた杉屋の顔は、背筋がふるえるほどに恐ろしく、美しい。
「な、何言っているんだ……」
 気勢を削がれて竹弥は全身から力が抜けていくのを感じた。
「もう、おまえも覚悟を決めて、新しい自分と向きあうといい。おまえは、本当は淫乱なんだよ。こうして男に抱かれるために生まれてきたんだ」
「ち、ちがう! 俺はそんなんじゃない。おまえが、おまえらが無理やり……」
 言いながらも涙がこぼれてくる。
 自分はごく普通の男のつもりだった。
 だが、この屋敷に囚われてから杉屋の手によってさまざまな責めを受けるうちに身体が変わってきた事実を、意地っぱりな竹弥も、さすがに自覚することがあった。死んでも認めたくはないが。
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