翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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乱れ桜 三

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(あと、もう少し……)
 熱が解放されるのを待って、身体のなかで猛りくるっている。
 どこかで自分を焦らしたい気持ちもあり、敢えて、すこし手の動きをゆるめてみた。
 頭のなかで憎むべき男の声が響いて来る。
(どうだ? ここか? ここがいいのか?)
 竹弥は悲鳴をあげる。
(ああっ!)
(まだだ、まだ遂かせないぞ)
(いや……!)
 まるで三下に襲われて泣くお姫様のようだ、と内心で自嘲する。
 妄想のなかで自分を犯そうとする男たちが卑劣で残酷であればあるほど、竹弥は清らかで無垢な姫君になるのだ。
清純でありたいから、自分を苛めるという複雑な心理状況。 
 こんなことを考えながらおのれの身体を弄っている自分が、たまらなく浅ましく恥ずかしく思える。だが、その慚愧の想いがまた竹弥を煽り、たかぶらせるのだ。
 少し病んでいるのではないか、と自分でも恐ろしく思う。
 それは、この屋敷に来て、杉屋に強引に心身とも開かされ、変性されて、あらわれてきたへきだろうか。もしかすれば、もともと竹弥のなかにあった淫蕩な嗜好だったのだろうか。
(俺は……、ああっ、俺は……!) 
 若い肉体はいよいよたかぶり、もはや何も考えられなくった。
 竹弥は欲望にしたがって、前後で両手をうごかしていた。まともな男ならけっしてしない行為をしながら、羞恥と悦楽に涙ぐむ。
(ああ、遂く――!)
 竹弥は全身をしならせた。
 まさに、その刹那、物音とともに声が聞こえてきた。
「気持ち良さそうだな」
 竹弥はあまりのことに、死ぬほど驚いた。

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