翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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夢の名残 四

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 開耶に触れれば、伊吹と触れ合うことができるのだろうか。あの夜かなわなかった想いを互いに遂げ合って、自分の気持ちにふんぎりをつけられるのだろうか。
「ね、先輩」
 甘えるようなねだるような声で、開耶が猫のように竹弥の首に顔を寄せつけてくる。
 竹弥は承諾も拒絶もできず、ただ困惑しつづけていた。その間に、開耶の手が浴衣の裾を割って、竹弥の中心をそそのかす。
「ああ……」
「先輩……熱い」
「だ、駄目だ」
 それしか他に言葉を知らないのかと自分でも呆れるほどに、おなじ言葉をくりかえしていた。
「ああ、駄目、駄目なんだ……」
 いよいよ開耶の手は強引になり、後ろへと伸びてくる。下着をつけていないことを指摘しないでくれることに、わずかながら安堵してしまう。
「うう……」
「大丈夫ですよ。怖くないから」
「やめてくれ!」
「ちゃんと、優しくしますよ」
 耳元に甘く囁かれ、竹弥は瞠目した。
 開耶は、今や完全に竹弥を組み伏している。女のように男にのしかかられて、逃げられない自分がひどく情けない。
 自分はなんと弱い男なのだろう。竹弥は慨嘆がいたんした。
 杉屋にもてあそばれ、浦部にもいいようにされ、そして今度は開耶に。
 閉じた瞼に伊吹の顔が浮かぶ。呆れているようにも見えれば、怒っているようにも見える。だが、最後には悲しげに見えた。
 開耶の指の動きは止まることがない。
「うう……!」
 背後の園の縁をやんわりと指でなぞられ、竹弥は全身をこわばらせた。
「大丈夫だから」
 そう言われても心は乱れ、首を必死に横に振っていた。
 秘所に侵入してくる指の感触に、竹弥が悲鳴をあげそうになったまさにその瞬間、襖が開いた。
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