162 / 225
夢の名残 二
しおりを挟む
すくなくとも、まだ見ぬ明日には、無限の可能性があったのだ。
そう思うと、またあらたな涙があふれる。
その涙を開耶の唇が吸う。
「先輩、可愛い」
また唇に接吻される。
「本当に、清二の魂が俺のところに戻ってきたみたいだ。俺が清二の代わりに先輩を愛したい」
「……だ、駄目だ」
浴衣の袷に開耶の手が伸びてきて、さすがに竹弥はあわてた。
一瞬、開耶はとまどうように指の動きを止めた。
「俺が嫌い?」
「ち、ちが……」
「お願い、先輩。今は俺を清二だと思って。そして、もう清二を傷つけないでやって」
そう言われると、強く抵抗できなくなった。
「清二はずっと、こうしたかったんだ」
「だ、駄目だ、こんな」
竹弥は、やはり、完全に抗わないわけにはいかなかった。開耶に触れられるのが嫌というよりも、すでに自分は杉屋や浦部の凌辱を受けて汚れたと思っているからだ。彼らの手の感触を覚えこまされた肌で、開耶に触れられることに激しい抵抗があるのだ。
自分でもうまく説明できない感情だが、いっそ無垢なままの身体だったら、開耶の想いに流されていたかもしれない。だが、すでに別の男たちの欲望に染まった身体で、開耶の想いを受け入れることはできなかった。
刹那、たまらない悔恨が胸にわき、刃物のように鋭く深く心をえぐる。
杉屋に汚されるぐらいなら、なぜ、あの夜、伊吹の情を受け入れてやらなかったのか。あの青春の激しくも切ない息吹の衝動を受け止めてやらなかったのか。
千回後悔しても、もはやどうにもならないことではあるが……。
そんな悔恨にひたる暇もなく、開耶の手は意外なほどの強さで竹弥を求めてくる。竹弥は焦った。
「木南、駄目なんだ。俺は、」
「開耶と呼んで。ううん、清二、とでもいい」
口調は男にしてはひどく柔かなのだが、手は意外にも力強く、熱い。伝わってくる情熱は、彼の秘めた激情と欲望を示しているのかもしれない。
すぐ目の前に開耶の美しい顔がある。
外国映画に出てくる美少女を思わせるほどに、日本人ばなれした美貌が、情欲の色に染まって、竹弥をはげしく求めているのだ。
そう思うと、またあらたな涙があふれる。
その涙を開耶の唇が吸う。
「先輩、可愛い」
また唇に接吻される。
「本当に、清二の魂が俺のところに戻ってきたみたいだ。俺が清二の代わりに先輩を愛したい」
「……だ、駄目だ」
浴衣の袷に開耶の手が伸びてきて、さすがに竹弥はあわてた。
一瞬、開耶はとまどうように指の動きを止めた。
「俺が嫌い?」
「ち、ちが……」
「お願い、先輩。今は俺を清二だと思って。そして、もう清二を傷つけないでやって」
そう言われると、強く抵抗できなくなった。
「清二はずっと、こうしたかったんだ」
「だ、駄目だ、こんな」
竹弥は、やはり、完全に抗わないわけにはいかなかった。開耶に触れられるのが嫌というよりも、すでに自分は杉屋や浦部の凌辱を受けて汚れたと思っているからだ。彼らの手の感触を覚えこまされた肌で、開耶に触れられることに激しい抵抗があるのだ。
自分でもうまく説明できない感情だが、いっそ無垢なままの身体だったら、開耶の想いに流されていたかもしれない。だが、すでに別の男たちの欲望に染まった身体で、開耶の想いを受け入れることはできなかった。
刹那、たまらない悔恨が胸にわき、刃物のように鋭く深く心をえぐる。
杉屋に汚されるぐらいなら、なぜ、あの夜、伊吹の情を受け入れてやらなかったのか。あの青春の激しくも切ない息吹の衝動を受け止めてやらなかったのか。
千回後悔しても、もはやどうにもならないことではあるが……。
そんな悔恨にひたる暇もなく、開耶の手は意外なほどの強さで竹弥を求めてくる。竹弥は焦った。
「木南、駄目なんだ。俺は、」
「開耶と呼んで。ううん、清二、とでもいい」
口調は男にしてはひどく柔かなのだが、手は意外にも力強く、熱い。伝わってくる情熱は、彼の秘めた激情と欲望を示しているのかもしれない。
すぐ目の前に開耶の美しい顔がある。
外国映画に出てくる美少女を思わせるほどに、日本人ばなれした美貌が、情欲の色に染まって、竹弥をはげしく求めているのだ。
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説


ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。

身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。


ふたなり治験棟
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。


男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる