翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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訪問客 二

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 いったい、どうしてこんな目に遭わねばならないのか。悔しさと無念で胸が張り裂けそうだ。
 薄暗かった室内が白っぽくなってきた。どうやら夜明け前の時間帯だったらしい。
 だが、この桜御殿には夜も昼ももはや関係ない。暮れることも明けることもないこの異世ことよ現世うつしよのはざまのような場所で、これからさき永遠に囚われて、地獄のような日々を過ごすことになるのではないか……。そんなおぞましい予感がして竹弥は怖気だった。
 身体はいつものように清められて、新しい浴衣を与えられていたことに気づいた。だが、それで激しい怒りと恐怖がおさまるわけもなく、ひどい苛立ちがわいてくる。 
 もともと熱を感じていた身体は、いっそう熱く燃えるようだ。そして、だるい。
 夜が完全に明けるのを待とうと、竹弥はとりあえず布団に戻った。
(なにも……考えられない。もう少しだけ、眠りたい……)
 眠っているときは全て忘れられる。目が覚めれば、また悪夢の日々だが。
 竹弥は心地良い布団のあたかみを感じながら、目を閉じた。
 とにかく、今はもう少し安らぎが欲しかった。

「どうしている?」
 襖が開かれ、顔を見せたのは当然、杉屋だった。
 竹弥は顔まで布団をかぶったまま相手を睨みつけた。杉屋は苦笑を浮かべた。
「あまり良くないか。それはそうと、おまえに客が来ているぞ」
 驚いて身を起こした。今のこの状況で客を迎えるなど出来ない。竹弥は狼狽してしまった。
「だ、誰だよ?」
「木南とかいう若い男……というか、少年かな。見た目は女みたいな外見の。以前にもここへ来たことがあるらしいが、通していいか?」
 開耶だ。というより、そもそもこの屋敷に竹弥がいることを知っているのは実家の人間を別とすれば、開耶だけだ。


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