翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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狂い咲き 十二

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 だが感受性ゆたかな幼児期にあたえられた強烈な性の刻印は浦部の性格も人格も人生をも変えた。
 普通に異性を愛し、行く末は結婚して子どもを持とうというすこやかな人生は、すでに浦部の未来にはあり得ない。浦部はそのことを本能的に予想していた。
 実際、浦部はごく普通に異性を慕うということができなくなっていたのだ。同性であってもそうだった。
 妄想のなかで貴蝶を凌辱したように、興味を持つ女性や男性をつねに手酷く犯し、辱しめる性的夢想を持ちつづけてきた。
 愛や恋もなく、ただ欲望をたたきつけ、相手の尊厳を破壊することにしか執着がもてない。そういう形でしか欲望を発散させることができない人間になってしまったのだ。病んでいるのだ。わかっていても治しようもない。
 今も、意識をうしなっている竹弥に激しい欲望を持っている。いまだ吐き出されることのない熱を、このあとどうしたものか。
(後ろ孔を使うのが駄目なら、せめて股でするぐらい杉屋もゆるしてくれるかな。口でさせれたらな)
 そんなことを激しく願っている。
 竹弥にはずっと前から興味を持っていたが、それは決して相手を想ってときめくような、村山槐多や折口信夫が文学作品のなかで描くような清い恋愛ではなく、竹弥を見かけるたびに、己の汚れた欲望を吐き出したいと劣情に燃えていたのだ。
 とことん傷つけ、おとしめ、はずかしめてやりたい。そんな征服欲と嗜虐欲に悶える想いで竹弥の背を追っていたのだ。人が聞けば、狂人と罵るだろう。
(いいさ。狂うところまで狂っていけばいい。人生は短く太くだ。そのあげくに狂い死にしたところで、惜しい人生でもないしな。……こんな美しい身体を抱けるなら、俺は狂っていて良かった)
 浦部はほろ苦く笑って、燃えさかる股間の熱を必死におさえながら、竹弥の横顔を見つめつづけた。 




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