翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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狂い咲き 七

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「駄目だ」
 にべもない、とはこういうのを言うのだろう。さすがに浦部もそれ以上は言わず、手のなかの、あわく飴色に光る道具をながめる。
「ほら、早くしてやれ。若様がお待ちかねだぞ。見ろ、切なそうな顔している」
「ち、ちが……」
 中途半端な状態に焦れているのは確かかもしれず、竹弥はまた唇噛んだ。
 そんな竹弥のもどかしげな様子をどう取ったのか、浦部の声ははずんでいる。
「まぁ、いいか。それじゃ、これを」
 分厚い舌で、平然とその道具を濡らす。
 竹弥は吐き気をおぼえた。
 ここまで自分をいたぶっておいて、そのうえ、まだ嬲り足らないというのだ。あらたに竹弥を凌辱すべく、恥もせずに道具を丹念に舐めている男は人間とは思えない。
「こ、こんなことをしておいて……そ、そのうえ、まだ俺を……」
「何言っているんだ? そのままじゃ辛いのはおまえじゃないか。ちゃんと、すっきりしたいだろう?」
 浦部が楽しげに、細い目をいっそう細めて、にじり寄ってきた。
 逃げたくとも、両手を縛り上げられている身ではかなわず、憎悪する男の手を、ただ待つだけしかできず、竹弥は目をつぶった。
「へへ……。気位たかい若様、いや、お姫様の仮面を剥ぎ取ってやるからな」
 目を閉じてはいても、湿った手が腰に触れてきたことは判る。
「うう……!」
 今度は、その手は遠慮なく、下着を引き下げる。
「あっ、ああ……!」
 竹弥は顔を空にむけて、全身で、いや、いや、と叫んだ。声には出さず、ただひたすら身をよじった。
「本当に往生際悪いな」
「ああ……!」
 とうとう、下着がずり下ろされ、股間に風を生で感じた。
 おののいているうちに、身体の背後を取られた。浦部の息を背に感じる。いや、ただしくは、腕を縛っている紐縄が捩れて、竹弥が反転するようなかたちで、浦部に背中を向けていたのだ。
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