翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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狂い咲き 三

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「見ろ、ここを、こんなふうにして。おまえもかなり立派な変態になってきたな」
 竹弥を一番打ちのめすのは、杉屋の言葉や仕打ちよりも、己の身の内で目覚めはじめた、もうひとりの自分だ。
(こんな、こんなこと……)
 竹弥自身、この異常な状況で熱くなっている自分の身体が信じられない。
「あぅ……」
 竹弥の股間は、杉屋にいじられるまえからすでに熱をもって反応し始めていたのだ。
「うわ……。なんだ、やっぱり、近江はマゾヒストだったんだな」
「ち、違う! これは、違う!」
「なにが違うというんだよ? 頭をもたげているじゃないか?」
 浦部は舌なめずりせんばかりだ。貪欲そうな顔に喜びがにじんでいる。
 美しく気品にあふれた白百合の花びらを食い散らそうとする芋虫のように、今にも竹弥に襲いかかりたいのだが、それは杉屋によって禁じられていた。
「ああ、たまらない! 本当に蛇の生殺しじゃないですか、これじゃ! いったい、どうしろっていうんですか!」
 その場で地団太踏む浦部を、杉屋は半ば呆れ、半ば面白そうに見ている。
 杉屋はしばし、物欲しげに竹弥の下着を引っぱっている浦部を、珍獣でも見るような目で見ていたが、やがて、ひとつの許可をあたえた。
「そんなに欲しいのなら、口を使うのは許してやろうか?」
「おお!」
 恥もなくベルトを外そうとする浦部に、杉屋は苦笑を向けた。
「馬鹿。そうじゃなくて、おまえが口でしてするんだ。それなら許してやるぞ」
「そ、そっちでもいいです!」
 浦部は出したシャツをあわてて元に戻すと、餌に飛びつく飢えた犬のように、竹弥の前にひざまずいた。
 こんなことが平然とできる浦部に、竹弥はあらためて侮蔑の目を向けたが、それを悔しいと思う感性すら今の浦部にはないようだ。
 いや、悔しさも腹立ちも、すべて欲望に変えて、浦部は竹弥に復讐をしようとしているのかもしれない。
「おまえの手管で、この小生意気な坊やを懲らしめられるか?」
「任せて下さい! おう、近江、おまえ、ちょっとばかり綺麗だからといって、それを鼻にかけて、今まで散々俺を馬鹿にしてきたんだろうが、今日はたっぷり泣かしてやるからな」
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