翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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狂い咲き 一

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(ああ……!)
 竹弥は、己のうちに、嬲られることに反応してしまう陋劣ろうれつな性がひそんでいたことに、気づき始めていた。
「すげぇ……色っぽい」
 ほとんど讃嘆の表情で、浦部が粘つくような視線をおくってくる。
「青い浴衣が脱げきれなくて絡んで……白い肌に桜の花びらがちらついて……ああ、これはもう芸術だ!」
 竹弥は恐ろしくなってきた。
 この男は、半ば妄想の世界に片足を突っ込んでいるのだ。その妄想の行きつく先は狂気である。狂気を秘めた人間は、己の夢を実現するためには、どんなことでもしかねないものだと、ここ数日杉屋と過ごした竹弥は身に染みて知っていた。
「青い浴衣が色白の肌に映えて……。その薄い紅、ピンク色というのか……その下着は似あい過ぎだ。……しかも、足には白足袋なんて、信じられないな」
 己の異様過ぎる格好を、口に出されて説明され、あらためて竹弥は死にたくなる。
 この下着を見せられたときの驚愕は、とうてい説明できない。
 まさか、と最初は思った。悪い冗談を言っているのだと信じたかった。
 だが、冗談ではなく、杉屋が本気で自分にそんなものを穿かせようとしているのだと知ったときの怒りと恐怖と絶望感。必死に抗ったが、最後は、写真をばらまくという最悪の脅しを受け、強制的に穿かされてしまったのだ。
 杉屋は、竹弥が目の前で自分で下着を穿くことを命じた。震えながら、涙ぐみながら、竹弥は心身を傷つける凶器のような布切れを自ら身につけなければならなかったのだ。
 あらためて死にもまさる恥辱に震えている竹弥を見つめ、浦部が唾を飲むように顎を動かす。
「すげぇ……、すげぇ。ああ、写真に撮っておきたい。いや、そんなものじゃ生温いな。街の真ん中か、学校前にこんなふうに晒してやりたい」
 心臓が割れそうだ。竹弥は瞑っている目を、もはや二度と開けれないような気になる。
「ああ、本当に、……この下着はこくだな。いや、罪だよ、これは」
 恍惚となりながら浦部はまた下着の横側を引っぱり、その動きによって竹弥自身を刺激する。
 かなり引っぱり、いきなり離す。
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