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春獄の宴 九

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「し、下も、いいですか?」
 涎を垂らして問う浦部は、もはや人間とは呼べない。その浅ましさと醜さに竹弥は吐き気を覚えた。
 だが、そんな竹弥の苦痛を尻目に、杉屋はくすり、と笑うと、無情にも許可を出す。
「ああ、いいぞ」
 竹弥は全身から血の気が引くのを感じた。
「い、嫌だ!」
 興奮した浦部が帯に手をかけてきたとき、竹弥は必死に腰をひねった。
「や、やめろ! さ、触るな! 俺に触るな!」
「なにを、今更、」
 死にものぐるいで暴れる竹弥に、さすがに浦部も手こずり苛立った顔をになった。だがいくら竹弥が必死になって逃れようとしても、両手の自由を奪われている身では、抵抗にも限りがある。
 しゅるり、と衣擦れの淫らな音をたてて、帯がほどかれ、地に落ちる。
 竹弥は耐えきれず、目を閉じた。

 目をつぶっていても、浦部が息を呑んだのが知れる。
「……へえ」
 驚いたような感心したような声のあとに続くのは、耳を覆いたくなるような嘲笑の嵐である。
「ははははははは!」
 浦部はのけぞって笑いながら、竹弥の股間を指差した。
「ひひひひひ……! に、似合っているぞ、それ」
 竹弥はあまりの羞恥と恥辱に、本当に舌を噛み切りたくなった。
 屈辱のあまり、四肢がふるえる。
 白い胸、細い腰……、だが、身体の中心を覆うのは、赤い薄手の、女ものの下着だった。それも透けて見える。
「どうだ? フランス製だぞ」
「さ、最高ですよ! はははははは!」
 下着といえば、ほとんど白しかなかったこの時代に、あまりにも過激で官能的なものだった。日本ではまだ見られない、女性が性的魅力を訴えるために作られた、見せるための、性感をたかめるための下着なのだ。
 浦部はしばらく笑いが止まらぬ、というふうに抱腹絶倒をつづけた。
 その時間は、誇りたかい竹弥にとっては地獄で拷問を受けているにも等しく、全身が悔しさのあまりがくがくと震える。
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