翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織

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春獄の宴 五

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 この状況で、この、どこか異常な男を前に、まずい態度だとは思うが、竹弥は言わずにいられない。
 浦部の手が自分に触れてくるのがたまらないのだ。杉屋に嬲られているときでさえ、これほどの拒絶感を覚えたことはない。
 ほんとうに蛞蝓か芋虫が自分の肌を這いまわっているような錯覚を起こしてしまう。
「そんなに俺に触れられたくないっていうのかよ? お坊ちゃん、いや、お姫様?」
「あ、当たり前だろう、気持ち悪いんだよ!」
 嫌悪に涙が出そうだ。
「あん? なんだと、奴隷のくせに」
 浦部の言葉は残酷な響きをふくんでいた。
「だ、誰が奴隷だ!」
「へ? 奴隷じゃないのかよ?」
「あっ!」
 身体をゆさぶられて、竹弥は手首に走る痛みに眉をしかめた。
「おい、あんまり乱暴にするなよ」 
 杉屋も眉をしかめたが、それ以上止めようとはしない。
「すいません。へへ……」
 その媚びるような笑いもおぞましい。
「そうだよな。こんな綺麗な肌を痛めたら、勿体ない」
 うっとりと、浦部が太い指で竹弥の、あらわになった胸の突起をいじる。
「うう……」
「へえ、けっこう開発されてるんだな。……後ろも慣らされているのか?」
 答えられるわけもなく、竹弥は悔しさに頬を燃やして浦部を睨みつけた。
 竹弥の口からは、絶対に言えない。
 たしかに後ろの園は、この屋敷に囚われてから幾度も幾度も狼藉を受けた。だが、それは常に命なき道具であって、まだ生身の肉を受け入れたことはないのだ。
 これほど貶められ、性をきわめた恍惚を数えきれないほど味あわされてはいても、竹弥はまだ無垢なのだ。
 その事実は、たまらなく恥ずかしいことに思えた。なまじ、凌辱されたことよりおぞましく、いたたまれないほどに竹弥の誇りを傷つける。
「どう思う?」
 いつになくおだやかな微笑を浮かべる杉屋に、浦部は一瞬、奇妙な表情を見せた。
「これだけ色っぽいのだから、当然、杉屋さんにたっぷり可愛がられているんでしょうよ」
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