125 / 225
孤城の落月 六
しおりを挟む
自分の身体は本当におかしくなってしまっているのだ。いたぶられることに、興奮して、快を求めだしている。
普通ではない。もはや、自分は普通の身体ではなくなってきているのかもしれない。
あらためて、恐怖と絶望に竹弥は泣いた。
だが、身体は熱くなる一方だ。
クィーン、という犬の鳴き声がのどかに聞こえてくる。杉屋の笑い声や、浦部の声も。他の職人たちは、仕事に取り掛かっているらしい。
「名前はなんていうんだい?」
「太郎ですよ」
「月並みだな」
「でも柴犬には似合っているでしょう?」
「よしよし、いい子だ。ほら、おやつにこれをあげよう」
犬の鳴き声がまた響いたかと思った刹那、竹弥は腰から背骨に衝撃を感じた。
(え? あっ、なに?)
杉屋がなにか餌を、肉のついた骨のようなものを与えたらしい。
まさか……、と竹弥は恐れふるえた。
だが、やはりそうだった。
その肉骨は、あろうことか、竹弥をもてあそぶ紐先につなげられているのだ。
「はぅ……!」
脚がびくびくと震える。竹弥は悲鳴をあげそうになった。
浦部の嘲笑が晴天の庭から響きわたり、竹弥の鼓膜に突きささる。
「杉屋さん、性悪ですね。あげるなら、あげればいいじゃないですか? 馬の鼻先に人参ぶら下げているみたいですよ、それじゃ」
「ちょっとした運動になるだろう? ほら、太郎、旨そうだろう? がんばれ!」
状況がますます想像されるにつれ、竹弥はおぞましさに悲鳴をあげそうになった。
「ああ、やめっ、やめろ……」
思わずもらしてしまった声は、幸い犬の激しい鳴き声に消えて、外にいる浦部の耳には聞こえないだろう。
「ほらほら、もっと跳ねてみろ。肉に届くぞ。ほら、もう少し」
獣が、爪か牙でも必死に伸ばしたのか、とてつもない振動が股間に伝わってくる。
人が意図してつくるものとは違う、想像を超えた動きの波は、いまだかつてない刺激を竹弥の身体と脳におくってくる。いや、たたきつけてくる。
「はぅ……!」
普通ではない。もはや、自分は普通の身体ではなくなってきているのかもしれない。
あらためて、恐怖と絶望に竹弥は泣いた。
だが、身体は熱くなる一方だ。
クィーン、という犬の鳴き声がのどかに聞こえてくる。杉屋の笑い声や、浦部の声も。他の職人たちは、仕事に取り掛かっているらしい。
「名前はなんていうんだい?」
「太郎ですよ」
「月並みだな」
「でも柴犬には似合っているでしょう?」
「よしよし、いい子だ。ほら、おやつにこれをあげよう」
犬の鳴き声がまた響いたかと思った刹那、竹弥は腰から背骨に衝撃を感じた。
(え? あっ、なに?)
杉屋がなにか餌を、肉のついた骨のようなものを与えたらしい。
まさか……、と竹弥は恐れふるえた。
だが、やはりそうだった。
その肉骨は、あろうことか、竹弥をもてあそぶ紐先につなげられているのだ。
「はぅ……!」
脚がびくびくと震える。竹弥は悲鳴をあげそうになった。
浦部の嘲笑が晴天の庭から響きわたり、竹弥の鼓膜に突きささる。
「杉屋さん、性悪ですね。あげるなら、あげればいいじゃないですか? 馬の鼻先に人参ぶら下げているみたいですよ、それじゃ」
「ちょっとした運動になるだろう? ほら、太郎、旨そうだろう? がんばれ!」
状況がますます想像されるにつれ、竹弥はおぞましさに悲鳴をあげそうになった。
「ああ、やめっ、やめろ……」
思わずもらしてしまった声は、幸い犬の激しい鳴き声に消えて、外にいる浦部の耳には聞こえないだろう。
「ほらほら、もっと跳ねてみろ。肉に届くぞ。ほら、もう少し」
獣が、爪か牙でも必死に伸ばしたのか、とてつもない振動が股間に伝わってくる。
人が意図してつくるものとは違う、想像を超えた動きの波は、いまだかつてない刺激を竹弥の身体と脳におくってくる。いや、たたきつけてくる。
「はぅ……!」
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説



ふたなり治験棟
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!


朔の生きる道
ほたる
BL
ヤンキーくんは排泄障害より
主人公は瀬咲 朔。
おなじみの排泄障害や腸疾患にプラスして、四肢障害やてんかん等の疾病を患っている。
特別支援学校 中等部で共に学ぶユニークな仲間たちとの青春と医療ケアのお話。

身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる