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桜散華 七

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「はぁっ! あああっ!」
 世界が暗転していくような快楽のなかで、竹弥は全身を張りつめて、向かうところひとつにすべてを賭けた。
「あっー……」
 数秒、竹弥は意識を手放していた。
 杉屋の悪魔のような嘲笑が室に響く。
「まったく感度がいいな。これからますます仕込めそうだ」
 気を失っていた竹弥の耳には、幸いにもその言葉はとどかなかった。

 そんなふうにして、桜御殿での悪夢のような調教の数日は過ぎた。
 絶え間なく道具で責められ、嬲られ、男として人としての自尊心を踏みにじられ、竹弥の精神は追い詰められていった。
 だが、杉屋はさすがに限界を見きわめているのか、竹弥の心が身体から離れてしまいそうになると、手をゆるめ、竹弥を休ませ、介抱する。
 食欲のない口に粥をそそぎこまれ、汚れた身体を清められ、清潔な衣類をあたえられ、かいがいしいような手つきで世話をされていると、それも悪魔の手管だとわかっているはずなのに、別の意味で竹弥の心は弱くなる。
たぶらかされるものか……)
 意識が定かになると常に竹弥は己に言い聞かせた。
 せめぎあいのような数日が桜吹雪につつまれた屋敷のなかで過ぎていく。

 竹弥は地団太踏んだ。いつもの和室である。
 快晴のその日、おだやかな陽光が和室にも滲み込んでくるが、竹弥の心には怒りの嵐が吹き荒れている。無理もない。
「ほどけよ、これを!」
 竹弥は先日されたように、ほぼ全裸に剝かれて、手を後ろで縛られていた。下着すらうばわれた下半身を覆うのは靴下だけという恥ずかしい姿のうえに、胸も股間も亀甲のかたちに縛られている。今日の紐は血のような紅色である。
 泣き出したいのを堪えて、竹弥は怒鳴りつけた。
「本当にいい加減にしろよ、この変態!」
 そんな竹弥の様子を、杉屋はさも面白そうに腕を組んで見ている。過酷な調教や凌辱にも決して屈しない、この美しく誇り高い虜囚を見るのは、杉屋にとって最高の余興なのだろう。
「おっと、静かにしていろよ。今日は人が来るんだぞ」
 その言葉に竹弥は驚愕した。
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